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ホンダの新型車生産開始で加熱する環境対応車競争

 本田技研工業(以下ホンダ)は、2008年6月16日に、水素で走る燃料電池車「FCXクラリティ」を栃木県高根沢の工場で生産開始することを発表した。アメリカで7月から、日本でも秋には各々リース販売を開始する計画で、今後3年間の製造販売目標は200台としている。
 環境対応車には、ガソリンなどの化石燃料を節約するタイプと化石燃料以外を燃料とするタイプに大きく分かれる。トヨタ自動車(以下トヨタ)が1997年から量産を始め、2008年5月に累積100万台を販売した「プリウス」は、ガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせて駆動するハイブリッド車で、使用する化石燃料を節約するタイプの環境対応車である。一方、今回ホンダが発表した「FCXクラリティ」は化石燃料を使わない燃料電池車である。現在は、ハイブリッド車がようやく本格的な普及期に入ろうとしているが、水素から電気を取り出してモーターを駆動させて走る燃料電池車は、排気ガスを出さず、水を排出するだけであり、次代の環境対応車の本命と目されている。
 ホンダは、ハイブリッド車も市場投入しており、2006年に1.5%であったハイブリッド車の比率を2010年までには10%(約40万台)へ引き上げる「10次中期計画」を掲げているが、本来はハイブリッド車ではなく、化石燃料に頼らない燃料電池車の開発・普及を重視しているといわれている。しかし、燃料電池車は、2002年12月にトヨタとホンダが市販車第1号を各々投入したものの、普及はあまり進んでいない。これは、1台数千万円以上するコストと、水素を供給するインフラ(水素ステーションなど)が整わないなどの壁に阻まれているためである。そのため、ホンダは、今回の新型車で、高根沢の工場には専用ラインを新設し、量産によりコストダウンを図る体制を整える一方、提供方法をリース主体とし、その価格設定も収益を度外視(アメリカでは月600ドルの3年契約)した破格の値段で設定し、普及に弾みをつける狙いだ。

 一方、ハイブリッド車「プリウス」で先行し、環境への対応を最重要課題とするトヨタ自動車も、新型燃料電池を搭載したハイブリッド車「トヨタFCHV-adv」を発表した。さらに、豪州のアルトナ工場で2010年から「カムリハイブリッド」を生産することも決め、2010年代の出来る限り早期にハイブリッド車の年間100万台販売の実現を目指し、長期的には、世界生産の1割を環境対応車とする計画である。
 この他、日産自動車では、東京大学と電気自動車普及へ向けた異業種研究会を発足させる。同社は、燃料電池自動車を2010年代初頭には日米で投入する計画である。さらに、富士重工業や三菱自動車も軽自動車ベースの燃料電池車を2009年に発売する計画である。また、スズキも米ゼネラル・モーターズ(GM)との共同開発を進めており、三菱自動車でも仏プジョーシトロエングループと電気自動車の分野で提携することを発表するなど、国際的な連携も目立ってきた。
 さらに、住友電工では、世界初となる超電動モーターで駆動する超伝導電気自動車を試作、2008年6月19日から開催される「北海道洞爺湖サミット」の環境総合展で一般公開を行う。自動車メーカー以外からも環境対応車をビジネスチャンスとして狙う動きも活発になっている。
 欧米では、ハイブリッド車を巡る開発競争が活発になっている。GMは、BMWやダイムラーと共同で開発したハイブリッド車を投入、ディーゼル車が普及しておりハイブリッド車開発には消極的であった欧州でも、フォルクスワーゲンがアウディやポルシェなどグループでの共同開発を行っており、メルセデスやBMWからもハイブリッド車の投入が予想されている。ハイブリッド車では、現在主流のニッケル水素型の電池から、今後はリチウムイオン型へのシフトが予想されている。ここにきて、世界最大の自動車部品メーカーのボッシュがサムスンSDIと折半出資の会社を設立し、この自動車用電池に参入する動きを見せており、次世代のリチウムイオン型電池の開発競争も注目されている。

 地球温暖化への対応、化石燃料枯渇化への対応、そして最近の原油価格の高騰への対応など、環境対応車への期待は高まる一方である。自動車メーカーを軸に、様々な企業がこのチャンス獲得に乗り出し、競争は加熱している。特に、次世代車として本命視される燃料電池自動車では、燃料電池スタック(従来の自動車の内燃機関に相当する自動車の心臓部)の性能向上、車上改質技術(ガソリンなどの液体燃料を車上で改質し、得られた水素をそのまま燃料電池で使用するシステム)の開発、水素貯蔵技術(燃料電池車の航続距離をより長くするために必要となる技術)の開発の三つの鍵がある。ガソリン車から燃料電池車へ切り替わるには、今後20年程度要するという見通しもあるが、例えば、急速な経済成長を続ける中国ではモータリゼーションの本格化に伴い、政府が環境対応車の開発を奨励している。こうした新興国がリードしていくことで、燃料電池車の普及がより加速していくことも予想される。
 各社の競争は、次代の自動車市場の主導権を巡る競争であり、現在、ハイブリッド車でリードしているトヨタも楽観視はできない。技術的なハードルを越え、水素燃料の供給インフラ整備の課題を越えた後に、どの企業が勝者となるのか注目される。
(2008.06)

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