賛否というより「議論」すべき本 |
THE PRINCIPLES OF WAR FOR THE INFORMATION AGE |
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ビジネスパーソンが店頭のおにぎりや半導体の売り上げ増を目指して、戦争戦略から学ぼうとしてその勉強を始める場合、「組織暴力としての戦争」は念頭におかないだろう。しかし、この本を読んだ後のビジネスパーソンは、戦争の原則を理解し、その恩恵に預かるだけの準備が
でき、ビジネス戦争の性質と競争戦略について考えることができるようになる。
一般に本を読む時には、著者の意見に賛成か反対かを決断するための視点を持って読む事が多い。総合的に本の意見に賛否の決断を下した後に、読者は著者の主張の前提や議論の全ての部分を直ちに受け入れたり拒否したりするものだ。現役陸軍士官による本書はそのような種類の本ではない。著者であるレオンハードは現役軍事科学教授であり、歯に衣着せぬ人物である。
著者は最初に「この本は賛成する本ではなく、議論すべき本である」と述べている。本書で述べる原則を日常へ適用することの普遍性を強調するために、彼は「紛争」(conflict)という言葉を頻繁に使用し、「戦争」や「戦闘」といった用語はほとんど使っていない。これが議論の領域を広げており、ビジネス、経済など人間の戦いを含むようになっている。
書名は「情報化時代のための戦争の原則」となっているが、技術系の読者は、最新のハイテクハードウエアや、陸軍が遠隔地から戦闘を行うために開発した最高の装置についての技術的な話を期待してはいけない。実際、著者の視点からは、古代から全ての時代においての戦争は、情報の有無、すなわち、著者がいう「知識と無知」が極めて重要な役割を果たしてきている。
21世紀においてゲームは違っても、原則はほぼ同じであるとレオンハードは議論を展開する。彼は直感に反した、今までと違った洞察を与えてくれる。戦闘中には「無知はタダ」だが、ある情報を探るため費やした時間には、生命で対価を支払わねばならない時がある。「知識は良いもの」「無知は避けるべきもの」ということは前提にすべきでない。これが戦争戦略に身を置く彼の見解である。
本書の冒頭約50ページを使ってレオンハードは、情報処理と有用性の変化、現代社会と紛争と戦いに関連したフレームワークを提示する。次に、本書のほぼ60%を占めるパートで、九つの古典的戦争の原則をそれぞれ考察している。レオンハードは、フラーが1926年に『軍事科学の基礎』で示した基準にそって、各原則を最新のものに書き換えながら、近代の社会組織、情報技術、歴史の教訓に照らして解釈している。
次のパートは本書の残り四分の一にある章だが、一番考えさせられるセクションとなっており、戦争に繋がる紛争だけでなく、社会と人間にかなりの考察を与えている。
戦争の原則へのアプローチの哲学的背景は、本の最後のセクションにあり、ここでレオンハードは、戦争の普遍の法則について述べている。彼は還元主義の危険を認めているが、過去の失敗を避けるための法則の探求が彼のゴールである。彼は自身の経験と他者による戦略史から引き出した戦争の普遍の法則を簡潔かつ明確に述べている。
レオンハードによれば、戦争の普遍の法則は三つある。
●人間性の法則(the law of humanity)
戦争は人間の魂の副産物である。それを逸脱する法則は無い。
●経済の法則(the law of economy)
この法則は人間の弱さと、追求するゴールを達成するための資源を人間が欠いている、という事実に基づいている、簡単に言えば、人間が限り無い野望を達成するために行使できる資源は限られている。
●二重性の法則(the law of duality)
著者は旧約聖書の一節を引用し、そこにこの法則を集約する。
「愛するときがあれば、憎むときがあり、争うときがあれば、平和のときがある」
これは人間の営みの諸刃の剣である。戦争の原則に関する、この哲学的な説明は本書の最後に提示され、読者に戦いの人間科学理論の哲学的基礎を与えている。
(2005.11)
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