力の論理─世界の戦いの歴史に学ぶ戦略経営法
第五章 勝てる戦略に学ぶ ― 戦略パターンの事例分析

2010.12 代表 松田久一

実務家に提案する日本的戦略思考法。

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他者経験から学ぶ

 戦略づくりの上達法のひとつは、戦史や事例等の歴史から学ぶことである。「愚者は体験によって学ぶという。私は他人の経験によって利益を得ることを好む」とビスマルクは言ったとされる。事例研究は実務にもっと生かされるべきである。

 ここでは、優れた戦略づくりの事例として六つの戦略パターンを事例にもとづいて整理したい。優れた戦略発想を学ぶ上で、他社の事例を分析し、戦略を抽出することほど効果的な方法はない。柔道などの武道に上達していく上で、「乱取り」などの実践的な練習方法があるが、これに相当するのが欧米のビジネススクールで行われる事例研究である。

 ここでは、第三章で整理した市場競争の原理や原則と第四章で述べてきたような状況認識に利用される分析枠組み、課題の設定の特徴、戦略発想の型、戦略発想の独創性の観点から、消費財メーカーや情報家電メーカーの事例を研究して得られた有力な六つの戦略パターンについて整理する。自社の戦略づくりやライバル企業の分析に活用し、これまで説明してきたことをより具体的に理解するためである。

 分析する戦略について三つの点を確認しておきたい。ひとつは、これらの戦略分析は、個々の企業の事例分析にもとづいているが、事例分析は新聞やマスコミなどで報道された公刊資料によって我々が独自に研究したものである。従って、分析対象企業の利害とは関係ない。ふたつ目は、ここで抽出している戦略は、当該企業のトップや経営スタッフがデザインしたものと企業の内部で創発されたものが一体となったものである。従って、必ずしも当該企業が表明しているものと同じではない。三つ目は、分析事例をもとにした戦略の選択基準は、今後、多くの分野で自社の戦略づくりに参考にでき、現在の競争に勝てるか、あるいは、将来勝てる可能性のある戦略である。

 ここでとりあげるのは、「顧客を深掘りする戦略」、「力による対決戦略」、「産業の融合戦略」、「市場多面化戦略」、「ものづくりひとづくり戦略」、「悪循環からの脱却戦略」の六つである。それぞれの戦略パターンは、戦略の原則、分析枠組み、戦略発想の型の三つの観点から、個々の事例の歴史経路分析を行い抽出したものである(図表5-1)。

図表5-1.戦略パターンの分析枠組みと発想の型
図表

[2010.12 MNEXT]

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