IV. 戦争に学ぶ

デジタル時代の戦いの原則-「レオンハードの機動戦略」

2005.11 代表 松田久一

 戦略で負けるとは、資源や戦力が同じ、あるいは上回るにも関らず、市場競争の運用の仕方が拙劣で競合に追いつかれ、追い抜かれ、顧客を失い、事業目的を達成できないということである。ここで、デジタル時代における日本企業の現状を把握し、戦略を学ぶ必要性を改めて強調してみたい。

 情報通信、デジタル家電、放送といった産業は、デジタル技術が共通基盤となって業界の技術的な垣根が崩れ、規制緩和によって産業が融合する新たな産業進化の段階に入った。これを「デジタルコンバージェンス収斂(しゅうれん)の時代」と呼ぶ。この大変革の時代に、日本企業は勝利を収めることができるのだろうか。デジタル家電の「三種の神器」と呼ばれる薄型テレビ、DVDプレイヤー、デジタルカメラなどのアプリケーション(最終製品)で日本勢はまだまだ強い。しかし、少し将来を見れば安穏としていられない状況が生まれている。

 デジタルコンバージェンスの時代の新しい携帯端末の覇者は誰になるのだろうか。新しい携帯端末とは、無線LANや様々な無線電波が利用でき、家庭では固定回線との切り替えもでき、音楽や動画番組が楽しめ、パソコン機能も備えたものを指す。日本勢は、先端機能、コスト、コンテンツやサービスで海外メーカーに勝り、トップシェアを確保できるだろうか。選択と集中を進めた日本企業のなかで、垂直集中や垂直統合で生き残れるのは数社である。米国企業が得意なプラットフォームやコンテンツとの新たな統合を急速に進め、新しい戦略を創造していく必要がある。

 しかし、日本企業の動きは極めて鈍い。デジタル時代の「負け方」は、日本企業が開発力、技術力、ものづくり、ブランド、すべての戦力で勝りながら、それらを運用する術、すなわち戦略の不在によって敗退するというものである。

 企業、産業、政府のどのレベルでも、不確実な将来の見通しをたて、戦場である市場で自らの安全を確保し生き残る術を考えるという当たり前のことができない。すなわち戦略のイマジネーション力に乏しいのである。日本勢が、戦略のプロたる軍人に学ばなければならない所以である。