III. 経済・情報産業組織について

「生活研究所報」巻頭言
利回り時代のマーケティング

1999.07 代表 松田久一

本コンテンツは、「生活研究所報 Vol.3 No.2」の巻頭言として掲載されたものです。

 中心から周辺への視点の転換が必要です。中心からみた消費は低迷を続けていますが、周辺では消費格差が拡大しています。やがて、中心と周辺が逆転して、現在の周辺が中心となり、消費格差の時代が迫っています。

 資本効率を高めないと資本調達ができず、投資競争に負ける環境がやってきました。企業間の信頼の構造が「カシ-カリ」関係からキャッシュフローしか信用しない構造へと転換しました。

 これまではシェアを拡大し、必要な資金は低金利で自由に調達し、キャッシュフローは無視することができました。量的な競争優位を築けばコストで最終的には勝てることができました。不景気になれば一律コスト削減をやる。それで済みました。

 市場の格差の拡大は、多様なマーケティングを要請し、コスト高にならざるを得ません。他社よりも一歩顧客接近するためには対応のバリエーションを高めざるを得ません。資本効率の観点からはコスト高が許される状況にはありません。どうやってこの矛盾を解決するか、それが編集の狙いであり、新しい経営課題だと思います。「格差」と「アクセス」が解決へのキーワードです。

 本書は、巻頭に基調論文として「利回り時代のマーケティング革新」(講演をもとに書き下ろし)、第2章、第3章はタブロイド版情報誌「マーティング力開発」等の掲載論文、第4章は当社の会員版ホームページに掲載中の「戦略ケース集」から17のケースをとりあげました。

 マーケティングはサイエンスであり、且つ、アートでもあります。よりよいマーケティングを志向するために三つのことに拘っています。事実、理論、そして事例です。本書は、この三つのうちの成功事例、先行事例を基本に編集したものです。

 新しい経営課題にどう迫っていくかの見本例になるものです。成功事例には必ず成功した要因が含まれています。失敗事例には失敗要因が含まれています。失敗しない要因は学べますが成功要因は学べません。成功事例は、その成功要因を自社に応用することができます。先行事例は、自社の現在の課題に先に取り組んだものです。どう取り組んだかを学んで応用することができます。後発の優位性を利用できます。

 事例研究は、自然科学とは違う社会科学で確立された経験から学び、法則を導きだし、応用するという優れた知的方法です。

 マーケティングの実務家のみなさんのより優れた戦略立案、モデルに利用して頂けるものと思います。

 最後に、実務の合間に執筆に呻吟した社員のみなさんに感謝いたします。また、この場を借りて既刊の研究所報やマーケティング力開発にご感想や励ましのお言葉をお寄せいただいたクライアントのみなさまと諸先輩方に深く御礼申し上げます。

[初出 1999.07 「生活研究所報 Vol.3 No.2」 JMR生活総合研究所]