II. 現代の戦略とマーケティング

5.地域経済再生を考える

地方活性化のためのメタマーケティング

2002.07 代表 松田久一

本稿は2002年7月26日に岩手県盛岡市で行われた岩手の生き残り戦略をテーマとした講演会における当社代表松田久一の講演を採録したものです。岩手県を例に地方の強みを生むマーケティングについて提案しております。

はじめに

 今日は岩手の強みを生むマーケティングということで、産業、経済の観点から岩手をどうするかをご提案させていただきたいと思います。

 私共の仕事はそもそも日本を代表する大手メーカーが多いので、いつも東京の視点から物事をみているわけですが、志学塾でお話させていただく機会があり、この8年間、少なくとも年に一度は岩手県を訪れています。仙台から盛岡に向かう新幹線の風景が、私の生まれた兵庫県の風景に似ており、岩手に対する思いをいつも考えてきたのですが、去年あたりからこれはダメだと思い始めました。

 東京が今、ものすごい勢いで変わっており、これからの地方経済は本当に危機の時代を迎えるのではないかと思います。仙台から盛岡に来るときの岩手の風景を見るたびに、地方経済を根本的に変えていかないとダメなのではないかという思いに至り、どうしたら岩手が復活できるかを少し私なりに考えてみましたので、皆さんにご案内させていただきます。

 今、ご覧いただいているのは4秒6メガの動画ですが、こういうものを岩手でいち早く光ファイバーを使い、NTT非依存型で、自前の光ネットワークを地域IP網という形でつくってみてはどうかということを岩手経済の起爆剤としてご提案させていただきたいと思います。

 今、東京から岩手まで動画を送ろうと思っても大変な時間とコストがかかって難しい。岩手の強みと弱みを考えた時、やはり日本に先駆けた光ファイバーの地域IP網をつくることが必要です。NTTは世界一技術力のある会社ですが、もう一方で世界一自己破壊しないと生き残れない会社という宿命を担っており、そこがポイントになっています。

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再生に向かう東京

 東京が伸びています。港区、渋谷区、中央区の都心3区の人口が増えているのです。10年前、港区は高齢化と人口減少で大変だと言われていたのに、今はマンションが足りない。高齢化どころか若年化が進んで50代以上の人口が少なくなり、30代の人口がどんどん増えている。そのように一夜で変わったのが港区ですが、その流れの勢いが都心3区に出てきています。これが東京が甦っている背景です。

 都心における住宅着工件数を見ても114.0%と大変高い伸びを示しており、マンションが売れなくなると供給公社も供給量を絞り、0.3%増と今年になってからも結構伸びています。江東区に高層マンションがいっぱいありますが、それがどんどんできている状況です。日本経済が沈没しても東京経済は沈没しないというのが結論です。

 地価の下落と下げ止まりが始まっています。大江戸線が開通しましたが、その沿線の地価は若干上昇気味になっています。下落が下げ止まるとどうなるか。大体日本人の金融資産は1,400兆円と言われています。日本のGDPは500兆円、中国は116兆円余り、韓国は約50兆円、韓国経済の約30倍が我々1億2,700万の日本人が持っている個人金融資産です。その6割ぐらいが現金、かつ不動産・住宅です。人々の消費における資産価値というものは、土地が下げ止まるとそこでキープされます。少し前までは5,000万円借金して現在価値3,000万円の家を手にしているというのが東京都の状況でしたが、地価の下落が下げ止まると資産がキープされます。

 平均300~500億の再開発プロジェクトが60ほど進行しています。六本木で大体2,000億、丸の内も数千億と言われ、東京都が一体となったプロジェクトです。もう一方でブロードバンド化が急速に進んでおり、最終ユーザーにはまだまだ見えませんが、産業レベルでみるとデータセンター、認証システムなどの産業が東京に集中しています。

 今、例えば岩手と青森に違うISPを使い、アクセスしようとすると、一旦青森のデータが東京に来て、そこでIXという形でチェンジされて、それが岩手県に戻ってくる。隣の県なのに直接来ないで東京を経由してデータが回ってくる構造になっており、そういう形で東京に新しい産業がどんどん生まれています。

 もう一方では「デパ地下」が超人気で、いろんな地域の名産が売られています。東京にはほとんど専業主婦はいなくて、みんな共働きですから夕方6時に会社が終わって帰る時にいちいち手づくりは面倒なのでデパ地下に寄っておいしいものを買って帰る。それがデパ地下人気の背景ですが、外資が参入してもダメならすぐ退出し、次々に新しい店ができています。

 複合施設もどんどんできており、フジテレビのあるお台場辺り、品川には映画館のあるホテルもあります。一方で、産業の空洞化が進み、中国、韓国に追い上げられ、家電メーカーもダメになっていくというのは、ある意味で大嘘であり、日本の技術力を示す商品が出てきています。

 東芝が世界最薄のノートパソコンをつくりました。メモリーはサムスンですが、高密度実装技術は日本が握っており、韓国やアメリカのメーカーにはできない技です。世界最小のノートパソコンを松下電器がつくっていますが、これも高密度実装技術をベースにしてつくっています。カラーテレビは7割ほどが中国でつくられていると言われていますが、日本系のメーカーが中国から世界に輸出している比率が7割を占めています。今、日本の製造業が海外で生産している額が50兆円。岩手県経済の10倍です。そんな形で日本のメーカーはきちっと生き残りを始めていますが、地域経済にとっては困ったものでどんどん抜けていく構造が出てきています。そんなことを含めて東京が盛り上がっています。

 その背景には、ダメだと言われている小泉内閣ですが、結構きちっとした仕事もやっており、都市再生法に基づく17地域指定を行って、そこで金融支援及び認可のスピードを早くしています。

 e-Japan計画も進行して流れに乗ってきている。石原都知事は立派な発言をしていますが、経済政策とIT関係、通信関係で言えば無策であり、何もしていただかないのが東京には楽で、今盛んに無線LANのレベルで競争が行われています。そんな激しい動き、都市再生法とe-Japan計画のふたつの柱で東京は復活しています。金融業が問題で、日本経済がダメなのは銀行のせいというのも終わり、不良債権から税制の問題に移っていますが、それにもまして東京はもっと勢いが出てきました。