小売業が厳しい状況にある。スーパーの売上は、14ヶ月連続で対前年同月比を割り込んで、▲4.9%。百貨店は、23ヶ月連続の前年同月比マイナスの▲5.7%である。コンビニエンスストアも、前年割れは8ヶ月連続で▲5.3%である。まさに、「小売業総崩れ」である(2010年2月現在)。この背景には、不況で収入が減少し、雇用や収入見通しがよくないことがある。さらに、車や家電などへの支出に積極的でない「欲しがらない」世代が増えていることもある。
他方で、伸びている小売業もある。ひとつは、ネットショッピングである。従来のネット企業に加え、大手組織小売業も力を入れ始め、成長はさらに加速しそうである。もうひとつは、セブン・アンド・アイホールディングズやイオングループのように、全国展開する組織小売業に対して、県単位の地域や地元(ローカル)で活躍する小売業である。
食品スーパーでは、ハローデイ(北九州)、オギノ(山梨)、ヤオコー(埼玉)、オオゼキ(東京)などでは、大手のライバルを寄せ付けず、連続増収増益などの業績を上げている。業種は異なるが、宮崎にあるホームセンターのハンズマンも凄い。
低価格競争の武器である経営規模や購買力が10倍以上も大きい全国チェーンが苦戦している一方で、なぜ、これらの企業は高業績をあげることができるのだろうか。なかでも強いローカル企業に共通する学ぶべきことは幾つかある。
ひとつは、これらの企業は低価格競争をしていないことである。リーマンショック以後の不況下で、大手は購買力を活かして、メーカーから有利な取引条件で仕入れ、低価格で競争しようとする。そしてその値引き分で購入アイテムの増加を狙った。しかし、実際には購入単価は下がり、購入アイテム数は増えず、購入額が減少した。伸びるローカル企業は、このような価格を武器にした売り方をしなかった。
ふたつめは、彼らが共通にとった施策である。彼らは、大幅な値引きをしない代わりに、顧客への様々な提案をしている。例えば、ハローデイの売場は、ディズニーランドのような「アミューズメントフードホール」だ。決して安くはないが、その90%が「買い物は楽しくない」と感じる子供連れ顧客への提案である。ヤオコーは、一食の炊事に15分しかかけない主婦が悩むメニューの提案を、顧客目線で提供し続けている。オオゼキの売場は時間によって変わる。野菜売場なら、昼間の専業主婦と夕方の有職主婦では選ぶ食材が異なるからだ。このような提案によって、ローカル企業の購入アイテムは増え、購入単価が上がる。
「行けば必ずある」を標榜するハンズマンは、「片手の手袋」を販売している。顧客の要望があるからだ。顧客の要望は、月に電話帳5冊分と言われ、およそ8割が採用される。品揃えは、同業他社の5倍以上の18万を超える「ロングテール」(裾野)需要に対応している。
売れるローカル企業と売れない大手小売業。その差は、様々な顧客の少しのニーズ変化に敏感に対応しているかどうか、の差である。不況下における顧客起点の小さなイノベーションの積み上げが、大きな結果の差に結びついている。
[2010.07 日立SQUARE]
| |