II. 現代の戦略とマーケティング

3.競争戦略のヒント

不況を乗り切る戦略経営

2008.11 代表 松田久一

本コンテンツは、2008年11月10日に行われた当社イベント「NEXT VISION 2009」の講演録と、同日使用したプレゼンテーションをもとに構成したものです。

 株価乱高下の状況で、大変厳しい経営環境が続いています。そういった中で不況というものを乗り切るマーケティングや戦略にはどのようなものがあるかをご提案させていただきます。

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不況のふたつの見方

図表1.不況の見方 - 平均とミクロ視点
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図表2.バブル以後の景気循環
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 現在日本には490万社の会社があるといわれていますが、これを横軸に成長率をとり度数分布図にしてみますと、ベルの形をした正規分布のグラフになります。

 景気後退というのは、この分布の平均がマイナスにシフトすることであり、景気後退とは統計上のマクロ的現象です。ミクロの視点でみると、不況期にも10%以上の成長率をあげている企業があります(図表1)。

 後でご紹介しますが実は不況期でも約30%の企業が増収増益を果たしています。もちろん、景気が良くなれば、もっとよくなるわけですけれども、こういったミクロの観点からみると、ライバル企業のなかには増収増益を果たしているところはいくらでもあるということです。

 経営やマーケティングは、皆さんの会社の固有名詞の仕事であって、平均の仕事ではありません。我々が考えていかなければならないのは、平均を超えた例外の経営、あるいは例外のマーケティングをいかにめざしていくかということになります。

 戦後の景気循環をみると、1965年から、いざなぎ景気と呼ばれる好景気が57ヶ月間ありました。政府には「景気日付委員会」があり、現在の景気はいざなぎ景気を超えた70数ヶ月の上昇局面が終わり、ついに下降局面に入ったということです(図表2)。今回は戦後14番目の景気の波です。平均的には50ヶ月くらいで循環するのですが、今回は70数ヶ月、戦後最長でした。少し遡ってバブル崩壊後の不景気を企業はどのように乗り越えてきたかを分析しています。バブル崩壊は1991年、株価が最も高かったのが1989年、地価は1991年です。そこでバブル崩壊が起き、金融危機が起きました。バブル崩壊後、3度の不景気をわれわれは経験しています。その間をずっと「失われた10年」と呼んでいるのです。

 現在、サブプライム問題に端を発したアメリカの金融危機が世界的な金融恐慌というような状況になってきて、実体経済に大きく波及してきています。

 消費の側から景気循環をとらえていくと、昨年あたりからガソリン代が上がり、食品の価格もどんどん上がってきています。生活コストが上がっている一方で、収入はなかなか上がらない。上がらない収入のなかで生活コストを切り詰めていかなければならないということで、消費意欲が下がり、実体経済に影響してきたということです。

 消費者感覚から言うと、収入は上がらないのに生活コストが上がっていくから節約する。本当はかさむガソリン代が理由なのに、エコだからといって車を手放してしまったという話を耳にします。食費が上がっているのに、土日はゴロゴロしていて動かないし、メタボだし、うちはエコでダンナを手放しました、というジョークですが、怖い話ですね。

 不況といわれる中の「統計的現象」についてお話をしました。不況下でも、確実に増収増益をあげている企業があります。1991年から93年のバブル不況のもとでも、28.3%の企業が増収増益を達成しています。もちろん減収減益であった企業が50.9%と約半数にのぼりたいへん厳しい状況にあったわけです。しかし増収増益をあげている企業は存在します。

図表3.不況期における企業業績
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 同様に、97年、98年の不況期でも39.6%、2001、2002年のITバブル不況でも32.1%の企業が増収増益を達成しています(図表3)。

 不況時には、確実に減収減益に陥る企業も多いですが、ミクロで見ると必ずしもそうとも言えません。結局、平均をめざしているわけではなくて、例外をめざしている。その例外をどうやって追求していくかが、われわれマーケター、ストラテジストの責任だと思います。いかにして巧くマーケティングを展開してこの不況から脱して、消費者にとって豊かな社会を築いていけるかということが、大きな課題になってきます。

[2008.11]