II. 現代の戦略とマーケティング

3.競争戦略のヒント

寡占対決を制する市場パワー戦略

2008.01 代表 松田久一

本コンテンツは、2007年11月22日に行われた当社イベント「NEXT VISION 2008」の講演録と、同日使用したプレゼンテーションをもとに構成したものです。

はじめに

 これからご提案をさせていただくポイントは、三つございます。

 ひとつは、現在の市場競争、市場環境をどのように捉えていけばいいかということです。結論は「寡占対決」と捉えてはどうか、ということです。市場の捉え方について、脱成熟の時代とか成熟時代、成長期などいろいろな言い方がありますが、今を「寡占対決の時代」と捉えてみると、市場が見えてくるのではないか、というのがひとつめのご提案です。

 第2番目に、その寡占対決の中で成功していくポイントとは何かということです。結論は「パワー」=「力」ということです。私どもは無重力の環境の中に生きているのではなく、そこには厳然とした力が働いているということをご提案しようと思います。日本は世界で一、二を争う豊かな国だと思っていたら、いつの間にか20位にまで落ちてしまっていた。スポーツ、国際政治、そしてビジネスの領域において、せっかく強いのに勝てない。あるいはあれだけ強かったのにいつの間にか負けてしまった、せっかく強者に勝てるチャンスがあったのに勝てなかった。そういう企業、事業も多いのではないかと思います。負けの背景にはやはり力といいますか、市場において働いているパワーの理解が少し不足しているのではないかということを2番目にご提案しようと考えています。

 3番目に、寡占対決市場でどうしたら勝てるのか。その「勝ち型」についてご提案していこうと考えております。幾つかの勝ち型があります。事例を通じ、勝ち型のパターンをご紹介して、最後にどうしたら競争戦略を構築できるのか、その原則をご提案します。皆様の事業や関心を持たれている企業について分析されるときのチェックポイントリストをご提示し、皆様の日ごろの実務において、ご参考になればと考えております。

01

小売市場の寡占化

 最初に申し上げたいことは、今は寡占対決の時代だということです。

 家電量販店業界では国盗り競争が起こっております。日本全国47都道府県のシェアをどんどんヤマダ電機が浸食している状況です。ヤマダ電機はほぼ全国制覇の勢いです。広島と九州の一部、東北の一部で取りこぼしはありますが、日本で成長していくということを考えていきますと、伸びていく領域というのは中部地方と東京圏に限られておりますので、ヤマダ電機の全国包囲網というのはほぼ完了しています。あとは東京圏で、どのように先手を打っていくかという競争になってきています(図表1)。

図表1.家電量販店業界の国盗り競争
図表

 家電量販店上位10社で日本の家電売上約7.6兆円の64%を占めております。上位3社で、約30%です。それぐらい寡占化が進み、ついに東京決戦という形になってきています。ヨドバシカメラは中央線沿線戦略をとっています。藤沢昭和社長の考えた山手線沿線戦略というのはもう終わっておりまして、秋葉原に3万坪の店舗で出店した後は、吉祥寺への出店など中央線に対して出店戦略をとっています。

 それに対して、ヤマダ電機はちょうど山手線沿線戦略をとっています。東京には五つの大きな消費者マーケットがあり、それに対して布石を打っているところです。

 ヤマダ電機は、今負けておりますが、中長期的に考えると全国包囲網は完成するのではないかと思います。それに対してヨドバシカメラあるいはビックカメラがどのような手を打っていくかというのが首都圏戦略のポイントとなります。皆様に申し上げたいことは、現代の競争というのはこのような寡占競争になってきているということです。

 ご存じのように家電流通だけではなく、小売市場の寡占化が進展しています。2005年と2006年以降をみても、売上高ランキングはイオングループを先頭に、セブン&アイ、三越伊勢丹ホールディングス、それからJ.フロントリテイリングと続いており、なんとヤマダ電機が6位という状況です(図表2)。

図表2.小売市場の寡占化
図表

 ご存じのように世界最大の小売業はウォルマートで、売上高20兆円です。驚異的な数字ですが、ヤマダ電機の山田昇社長に言わせますと、ヤマダ電機は最終的にはウォルマートとの対決になる。つまり、ウォルマートが家電流通市場に出てきたときに、世界で勝てるかというのが生き残りのポイントだと見ているようです。

02

進む産業の寡占化

 こうした家電量販店間で典型的に見られるような競争、そして小売市場における寡占化競争が、産業全体ではどんなふうになっているのかを調べました。公正取引委員会の平成16年度出荷生産集中調査の結果を独自に集計し、1975年から2004年までのデータが全て揃っている85品目を抽出し、上位3社および上位5社のシェアがどのように推移しているかを分析しました。上位5社のシェアの合計は1975年からどんどん上がり、90%を超える段階にきています。上位3社のシェア集中もどんどん上がり、現在のところ、80%近くにまできています。公正取引委員会では寡占度が進んでいるというデータはあまり出していないのですが、独自に集計しますと明らかに産業の寡占化が進んでいるということです(図表3)。

図表3.進む産業の寡占化
図表

 経済学ではハーフィンダール指数という言葉がよく使われます。これは市場における各事業者のシェアを二乗して、それを足したものですが、シェアが集中すれば集中するほどハーフィンダール指数は高くなります。一般的には1,000を超えると寡占化が進んでいると言われていますが、1975年時点で既に2,000を超えており、その後もどんどん上がり、2004年では2,900まできています。

 もうひとつ注目したいのは、1996年を境に日本の寡占化が進んできたということです。小泉構造改革の時代に世の中変わったのではないかと言われていますが、実はそうではなくて、日本の大きな構造転換というのは1996年あたりにあったということです。当時、阪神・淡路大震災、オウム・サリン事件、そして金融ビッグバンなどがありました。あのときに日本は大きく変わり始めたということが、地域格差についても言えるのですが、シェアの寡占度の集中傾向についても、1996年あたりから、どの業界でも急速に進展しています。従って、敵の見える時代、ライバルが見える時代になってきているというのが今の競争のポイントだと思います。皆様の業界ではいかがでしょうか。ライバルが見えるようになってきているのではないでしょうか。

03

市場構造の変化

 寡占対決の構造というのは、原料の方から見ましても原料不足、価格高騰の中で寡占対決が起こっている。さらに、供給者、サプライヤー、製造業というレベルでも寡占対決が起こっていて、流通業でも寡占対決が起こっています。一方、消費者はどんどん多様化が進んでいます。あるいは人口減少の中で需要のロングテール化、一人ひとりの需要が趣味化していきまして、今回、ご提案させていただくような「趣味的なライフスタイル」が生まれてきています。

 消費者の階層化が進んできているなかで、供給者の側では全く逆の現象、つまり供給者の数がどんどん少なくなり、寡占対決、寡占状況が益々進展するという図式で捉えることができます(図表4)。

図表4.市場構造の変化 - 寡占対決
図表