I. 現代の戦略とマーケティング

2.マーケティングの切り口

シングル社会への価値転換と張り合い消費

2016.01 代表 松田久一

 本コンテンツは、2015年11月25日に開催された「ネクスト戦略ワークショップ Next Vision 2016」での講演に加筆・修正を加えたものです。


 今の時代を、どうとらえるか。マーケティングの本質は、そこにあると思います。ユニクロを運営するファーストリテイリングの柳井正氏は、これから「カジュアルの時代」が来るととらえました。また、アップル創業者、スティーブ・ジョブズ氏は「コンピューターはデジタルハブになる」と定義しました。それぞれの企業が、独自の視点で時代をとらえる必要があります。

 今日は、五つの枠組で、話をしたいと思います。「変化する消費者の価値意識」、「デモグラフィックの変化」、「消費支出、収入資産、居住地域の変化」、「消費トレンドや消費意識」、変化に伴って生まれる「機会と脅威」の五つです。

 まずは、消費者の価値意識の変化を紹介します。弊社が毎年行っている消費社会白書の調査では、だいたい100項目の価値意識を調べています。それを分析すると、日本人の価値観は、五つで8割を説明することができます。

 一番の主流は、「地域密着」の価値観です。百貨店の物産展や、ふるさと納税が人気なのはこういった価値観が影響しているのかもしれません。次いで、「自己実現」です。その他、今の生活レベルから落ちたくないといった「自己上昇」、自分らしさにこだわりたいという「原子個人」、今が楽しければそれでいいなどの「現在享楽」が、その五つの価値観です(図表1)。

図表1.「地域密着」が大勢 ― 現在の価値意識
図表

 この中で、注目すべき現象がふたつあります。ひとつは、大勢を占める「地域密着」と「自己実現」が、低下傾向にあることです。地域を大切にしたいと頭では思っていても、体は東京を向いています。また、高齢化が進み、自己実現の意味合いも変わってきているようです。もうひとつは、格差意識が広がってきていることです。今回の消費社会白書の調査でも、約8割の人が収入や資産の格差が広がっていくと答えています。これらが、サイコグラフィックスの面の特徴です。

 一方で、人口減少社会となり、デモグラフィックの面でも変化が起こっています。人口減少で、困るのは民間企業だと思われがちです。しかし、一番困るのは公務員です。300万人の公務員の仕事量は、人間の数で決まるからです。逆に、この人口減少にうまく対応しているのが、セブン-イレブンです。20年前は、10代20代が客層の過半数でしたが、今は40代以上が50%を占めます。企業はターゲットや単価、アイテム数を変えることで、売上を維持できます。