II. 現代の戦略とマーケティング

2.マーケティングの切り口

次世代マーケティングコミュニケーション
-情報の信頼性が顧客を爆発的に増やす

2007.06 代表 松田久一

2007年2月にある業界団体での講演録をもとに加筆・編集したものです。

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はじめに

 JMR生活総合研究所は、主に日本の製造業、消費財メーカーのマーケティングのお手伝いをしております。市場研究、消費者研究をベースに企業の戦略経営及びマーケティング政策の研究提案をしております。こうした知見をもとに、今後、消費者と企業を結ぶマーケティングコミュニケーションがどう変わっていくのかというお話をしてみたいと思います。

 最初に結論を申しあげますと、これからお客さまとの間で一番重要になって参りますのが、Web2.0やCGM(Consumer-Generated-Media)と総称されるようなコミュニケーションツールの活用以上に、消費者の企業の商品サービスへの「信頼」をどう醸成していくかということではないかと思います。

 話の大きな筋は三つです。2006年はどんな市場トレンドがあったのか、と昨年を振り返ります。そのうえで2007年の市場トレンドをどのように捉えたらいいのかを展望します。

 最後は、お客さまが変わっていく、技術が変わっていく、そういう中で消費者と企業のインターフェイスであるマーケティングコミュニケーションがどうなっていくのかというお話をさせて頂こうと考えております。

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2006年の市場トレンド

図表1.2006年度の市場トレンド
図表

 06年の市場トレンドということで三つあげております(図表1)。

 ひとつは、昨年一番注目された「下流」ということです。よく言われている格差社会です。収入格差、地域格差が大変広がりました。その結果、若い人たちを中心として下流、下層という流れが大きなトレンドとして出てきた、というのがひとつです。下流、下層をテーマにした本もベストセラーになりました。

 二番目は「オタク」ということです。オタクという消費の購買行動に着目しておりました。

 ブログで言いますと「しょこたんブログ」です。眞鍋かをりさんが「ブログの女王」と言われておりましたけれども、「新ブログの女王」と言われております中川翔子さんのブログが今大変ヒットしております。いろいろな雑誌の表紙にもなっておりますし、いろいろな媒体にも出ておりますし、とにかく女オタクといわれる方のブログです。女オタクの特徴は三つのロングだと言います。ひとつはロンリネス。いつも何か待ち焦がれているということです。ふたつめはロングヘア、三つめはロングスカート。何故ロングヘアかと言いますとサロンに行くのがもったいない、その分マンガに投資できます。何故ロングスカートかというと、ジーンズはくほどファッションに関心がない。それがいわゆる池袋の乙女ストリートを歩いている方々のひとつの特徴でございます。特に男オタクよりも女オタクのほうが注目されたのではないかと思います。

 三番目にWEB2.0です。梅田望夫さんの「WEB進化論」、あれは本当にお得な本です。梅田さんの功績というのは日本に「グーグル」というものを紹介したということです。そして見事に二分法でこの世を分けてみたということです。どう分けてみたかというと「あの世」と「この世」。グーグルはあの世にある、ソニーはこの世だと、そんな二分法論が非常に流行りましてWEB2.0という世界が出ました。

 それと米TIME誌の表紙の「It's You」ということです。これは毎年12月、小泉(純一郎元総理大臣)さんとかブッシュ大統領が出たりするのですが、06年は表紙に銀紙が貼ってあり自分の顔が映るようになっていまして、06年のパーソン・オブ・ザ・イヤーは「You」である、あなたなのだ、という表紙になったわけです。

 また注目されましたのは、梅田さんの本の中で紹介された「べき分布」と「ロングテール」という話です。

 世の中の人の身長とか体重の分布というのは正規分布と言いまして、平均と分散でだいたい全体を把握することができるというものです。身長の平均が170センチで標準偏差が10くらいだとすると、身長140センチから200センチの間にほとんど99.9%の人々が入るということです。

 けれども、実は世の中そういう分布には従っていない、正規分布と言われるものではなくて、世の中はべき分布なんだというのが基本的なことであります。

 アマゾンのデータがあります。販売ランクの大きいもの順に左から並べていきまして売上数値をとってみますと、左の10万冊でもの凄い集中的な分布が起こっていまして、それがずっと裾野の方の230万冊までいって初めて100%になる。そうしますと、10万冊ぐらいのところで全体の64%ぐらいの売上になり、残りの10万冊から230万冊で残りの4割弱の売上を作っているということになります。この長い裾野を商売の中にうまく取り入れたら成功するのだというお話であります(図表2)。

図表2.ベキ分布とロングテール
図表

 セブン-イレブンというのは逆のことをやっていまして、いわゆる上位集中の商品だけを置いているわけです。菓子パンなどでいきますと、メーカーは毎週十数種類の新製品を導入しています。年間で膨大な新製品投入になるわけです。それをどんどん早く回転させていって売上を上げています。それからコンビニエンスストアの一番大きな売上はどこかというと、おにぎり売場です。セブン-イレブンのおにぎりは大変おいしい。毎週商品開発をしているからですが、売り場面積は10%しかない。そういうところに品揃えを集中しているわけです。集中していくことによって死に筋をどんどんカットしています。何故カットするかというと、アマゾンのように在庫コストがゼロというわけにはいかないからです。セブン-イレブンの場合は在庫コストが膨大にかかるわけです。あの限られた商品でだいたい5,000点くらいの品揃えをしているのですが、その5,000が限界なわけです。つまり「べき分布」と「ロングテール」をベースにして逆をやっているのがコンビニエンスストアだということになります。

 我々は、現実にはこの10万冊ぐらいの生活のなかで、セブン-イレブンの世界で生きているわけですけれども、「あの世」の世界、グーグルが主導する世界、そういう社会にネット社会がなっていった時に、ロングテールで売上を作るような世界になっていくのではないかというのがポイントであります。

 このようなことが06年のトレンドと言われたわけです。07年はどうなるのか。これからどう変わっていくのかというのがこれからのお話です。

[2007.06 MNEXT]