II. 現代の戦略とマーケティング

2.マーケティングの切り口

成熟ブランドの売り方

2007.04 代表 松田久一

01

納豆ダイエット事件の経済的教訓

 納豆が売れている。データの捏造が発覚し1ヶ月以上が経過する2月末時点でも対前年比150%という。およそ1,600億円の成熟市場が2,400億円に成長する可能性を持っている。「納豆ダイエット事件」が教えてくれたことは、成熟商品でも新たな情報が付加されれば売れるということだ。

 弊社の調査結果では、実際に番組を視聴したのは、20~69才男女個人全体の約19%、全体の29%が口コミの発信者になり、65%が納豆ダイエットを認知、27%がその情報を信じた。

 着目したい点はふたつある。第一に、ふだんテレビ番組を信じない人が情報を信じたことである。第二に、放映後わずか3週間で納豆ダイエット認知が65%と高速浸透したことである。この予想外の結果、成熟市場で数億円のプロモーションを投下しても得られない150%の売上増加やおよそ800億円もの市場拡大効果がもたらされた。つまり、うまくやりさえすれば成熟市場でもプロモーションは成功できると納豆は教えてくれている。その成功の基本的な鍵は、情報の信頼性の獲得と商品サービスに価値を付加する情報の切り口である。

02

情報とのクロスで潜在価値を引き出す

 「24時間戦えますか」。懐かしいバブル時代のキャッチフレーズだ。言葉が大ヒット商品を生むことがある。しかし、一行の言葉で売れる程、ブロードバンド時代の市場は甘くない。

 「おいしい」や「手作り」などの紋切り型の納豆の宣伝文句はこころには響かない。「妻タンゴ 息子はスノボ 俺メタボ」の川柳に象徴されるように、年間1,200食を食べる時代から一日1,200kcal内のメニューの絞り込み時代だからだ。しかし、「ダイエット」と結びつき、納豆が持っていた潜在的価値が引き出された。

 どんな情報が成熟商品の潜在価値を引き出すことができるのか。80歳で20本の歯を残す「8020運動」を展開するサンスターの「GUM」。1日に必要な野菜を採ることをそのままネーミングに採用したカゴメの「野菜毎日これ1本」。営業現場で「地産地消」をテーマに地域自治体や農協を巻き込んだ展開を図っているキリンビール。「日本の女性は美しい」をメッセージにした資生堂「TSUBAKI」。「亀山工場製」を店頭訴求し、ものづくり日本の復権の象徴イメージを与えたシャープの「AQUOS」。これらは商品の潜在価値を引き出した事例だろう。

 商品サービスの潜在価値を掘り起こすには商品サービスの新しい補完関係を見つけ出すことである。靴下は右足と左足の別々では用をなさない。補完関係とは既存の商品サービスの顧客価値が高まるような商品と情報の関係のことである。お客様に代わって「片方の靴下」を探すことが潜在価値を見つけることだ。