3週間で売上を150%にする情報プロモーション
-「納豆ダイエット事件」の教訓

2007.02 代表 松田久一

本コンテンツは、日立キャピタル「SQUARE」掲載の原稿に加筆修正を加えたものです。

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 「納豆ダイエット事件」から学ぶことは多い。これは言うまでもなく関西テレビの「発掘!あるある大事典II」の納豆ダイエット特集が捏造されたデータなどによって制作され、社会問題化した事件である。この事件は放送の公共性を担保に免許交付されている放送局と下請け制作会社によって引き起こされ、放送局の法令遵守意識と作り手のモラルが問われた。

 他方で、見落されがちな経済的な教訓がある。成熟商品でも新たな情報が付加されれば売れるということを証明したことである。消費者レベルでは事件が沈静化している現在、納豆のスーパーでの売上は対前年で5割増を維持し、納豆の拡売に成功した。なぜ、伝統食材である納豆は売れるようになったのか。

 事件の経緯は次のようなものである。1月7日に、納豆のダイエット効果を訴求する番組が放送され、平均世帯視聴率は約15%だった。その効果によって、11日には納豆メーカー各社の品切れお詫びの新聞広告が出され、12日には、新聞各社及びインターネットニュースで納豆品薄が報道される。16日、この日発売の「週刊朝日」で「納豆ダイエットは本当に効くの?」の懐疑記事が掲載される。21日、関西テレビは、番組で使用されたデータの捏造などを認める謝罪会見を行う。22日には、花王がスポンサーから降り、翌日には処分が発表されるが、視聴者から多くの苦情が寄せられ、25日にはテレビ局に寄せられた苦情が1万件を突破する。その後は放送規制を求める声が強まり、政府及び政治的な関与が強まっていく。番組放送から約7週間後の2月末にはスーパーでの納豆売上が対前年150%と報道される。

 この事件の番組放送からほぼ事態が沈静化した3週間後の1月末までの消費者の認知状況を見てみる。20才から69才までの成人男女個人全体の約19%が番組を見ていた。29%が口コミの発信者になり、65%が納豆ダイエットを認知し、全体の27%がその情報を信じて、8%が実際にダイエットを試した。その後納豆ダイエット情報と捏造問題の認知者を合わせると最終的には認知率94%にまで達した。そして、捏造発覚後は42%が憤りを感じている。しかし、納豆は売れ行き好調を維持している。