I. 消費社会をどう読むか

2.消費リーダーを斬る

「かつて」ブランドの復活

1991.06 代表 松田久一

 多様化した成熟市場で、顕著になってきた現象がある。

 昔の大型ブランドの復活だ。

 単なるレトロ現象ではない。

 カルピスウォーターとチキンラーメンが快進撃を続けている。ふたつのブランドは、ともに、現在の30代にとっては、懐かしい飲料であり、食品だ。これらの市場の中心顧客にとっては、新しいブランドでもある。

 奇をてらった、ロットを絞った限定販売でもなく、本格的なマスブランド商品として着実に市場拡大を狙っている。

 導入にいくつかの共通項がある。

 両ブランドともかつて市場を席巻した大ブランドだ。

 両ブランドとも基本的な味は変更していない。

 両ブランドともリニューアルを試みている。

 カルピスは、希釈飲料から缶飲料に、しかも、甘さは控えめ、チキンラーメンは、袋麺からカップ麺に、しかも、乾燥鶏肉の具が付加された。

 両ブランドとも目立ったマス広告は打っていない。店頭と自販機で最大限の面をとっている。

 かつてのブランドが復活できる理由はいくつかある。

 「新」に飽き飽きした顧客。

 広告に再投資しなくてもすむ高認知率。

 ロングブランドにしか手に出来ない「安心」「保証」「責任」を求め始めた顧客。

 思わず話題にしてくれる長期支持顧客の存在。

 平均的な日本人は一日に7,300本の広告に接する。かつてのブランドは、この膨大なコミュニケーション空間の中で復活できる機会を見いだしている。

 今、現代人を刺激できる感情は追憶なのかもしれない。

 ブランド再考の一側面である。

[初出 1991.06 「営業力開発」 日本マーケティング研究所]