I. 消費社会をどう読むか

2.消費リーダーを斬る

営業力サポートシステムの提案
-コンピュータBasedマーケティングを考える

1983.01 代表 松田久一

 取扱い品番の増大で、営業力の一側面である情報処理能力の必要性はますます高まっている。一方、コンピューターはますます安くなり販売マネジャーの裁量権のなかに入ってきている。このふたつの条件、利用次第で営業力の水準は大きく変わってくる。今、営業力開発は、システム作りとソフト開発の時代に突入した。

01

マーケティングマンにとってのコンピューター

 OA、パソコンの導入で有名な企業は数多くある。しかし、OA、パソコンを導入して、市場シェアが伸びたとか、新製品開発が続出したとか、あるいは販売額が急激に伸びたというような業績、成果に結びついた事実を聞いたことがない。また成長、収益性のアップのために導入したという企業もない。それは、現在のOA導入戦略が、内部効率、とくに事務の生産性向上に焦点が置かれ、マーケティングマン、戦略スタッフの課題とは独立した形になっているからである。

 しかし、現在企業は市場環境への適応が必要であり、品種から品番への需要に、業種から業態への流通に、対応することが必要になっている。

図表1.
図表

 マーケティングマンに必要なコンピューター導入の視点はここにある。1品種、1,000品番を持つ企業は、品種ごとの市場の分析で十分であったものが、1,000の品番ごとの分析が必要になってくる。情報量が飛躍的に増加したのである。つまり、エントロピーが増加して不確実性が高くなったのである。短絡して考えるなら、これに対処するにはスタッフの情報処理能力をアップさせるしかないということになる。すなわち、コンピューターの導入である。こうしてコンピューターの導入により品番需要に対応できるなら、OAを導入した企業は成長著しい、という結果になっているはずである。ところがそういう事実はない。結論を言うと、品番需要に対応するには、JMRの提唱する第三次創業が必要であり、営業力開発と事業開発が必要なのである。それには、第三次創業を推進していく主体がいる。そしてその主体は、固有名詞あると同時にシステムである。これが実現されてこそ、品番需要への適応が可能であり、システムのなかに、コンピューターが生かされてこそ、コンピューターは戦略課題に結びつくと言える(図表1)。

 さて、ここで具体的な営業力開発をサポートするコンピューターシステム(Business Support System、以下BSSと略す)の概略を提案したい。

02

BSSの提案

図表2.
図表

 営業は、ふたつの側面を抽象的に見れば持っている。ひとつは、人的セールス活動という側面であり、もうひとつは、情報処理活動という側面である。営業力開発は、前者のシステム化に重点が置かれているのに対し、BSSは、後者のシステム化をねらっている(図表2)。

 営業力開発で、セールスマンの同行調査をし、時間分析をしてみると、ほとんどの企業のセールスは、約25%の時間を社内活動にあてている。このことは、決して無駄ではないが、その中味を見ると数々の伝票発行等の消極的な活動になっている。一方、販売計画、訪店計画、といったもののために必要な顧店情報、競合メーカーの情報、エリアの情報、売上げ実績といった積極的なデーターの整理には、ほとんど時間がとられていない。

 前述したように、品番需要下では、意思決定あるいは計画に必要な情報量は、飛躍的に増大しているにもかかわらず、現状では、データーの整理もできていないのが実情である。

 販売計画は、[1]いつ(When) [2]どこに(Where) [3]何を(What) [4]どのように(How) [5]どれぐらい(How much)売ればよいかを、明らかにすればよいものだがそれには、膨大な情報処理が必要になってきている。

 これを実行しようとすれば計画力をアップさせることはできるが、それにとられる時間が増加し、実行力がほとんどともなわないことになる。しかし販売計画がなければ、有効なプロセス管理、マネジメントは望めない。

 営業力を分解してみると、マネジメント力、計画力、実行力、後方支援力の四つに集約できる。これから考えると、営業力をアップさせるためには、四つの要素の同時極大化が必要になってきている。にもかかわらず、四つの要素が、それぞれ、トレードオフの関係にあり、単純に計画力が弱いから、計画性を高めればよいという構造にはなっていない。

 これを解決するためには、営業力をアップするためのコンピューター支援システムが必要なのである。

図表3.
図表

 このシステムは、今までにも何度も考えられてきた。特に、これをさらに拡大すれば、70年代に、一時ブームになったMIS(Management Information System)に通ずる。しかしこのMISは、失敗に終わった。その原因は、コンピューター中心の設計で、「意思決定プロセスおよびその環境に注視せず、データーシステムのみに好んで取り組んだ」(モンゴメリー)ということであった。つまりデーターのインプットと蓄積は増加するばかりで有効なアウトプットを出し得なかった、ということである。この教訓から我々は、BSSの設計ポイントを、次の六つにおいている(図表3)。

  1. BSSは、エリアの正確でスピーディーな販売戦略の立案とそのプロセス管理、顧客管理を重点におく。そのため、各営業単位でのシステムを構築する。
  2. 本社経営情報システムとは独立させた複合システムを確立する。
  3. データベースは、本社との共有と同時に独自でデータベースも持つ。
  4. 在庫問合せにスピーディーに対応するためリアルタイム処理とする。
  5. 販売計画の立案支援には、シミュレーション、対話型支援としセールスの利用率を上げる。
  6. コンピューターは、非定型的な業務に有利なビジネス用パソコンを最大限利用する。

 これからの営業力アップ=営業力開発は、市場環境の複雑かつ変化の速い情報に対応していかねばならなくなってきている。販売マネジャーとそのスタッフの役割も「号令」で済まない段階にきている。一方、この仕事はEDP室、コンピューター室に任せて置くこともできないし、また彼らは現行システムの保守で苦しんでいる。

 熱力学の第二法則-外部との間にエネルギーの出入りのない孤立した物理(販売システム)系では、その状態が変化するとき、エントロピー(不確実性)は変わらないか、または必ず増大する-が営業力でも普遍性を持つと同意していただけたら「よい結果が出るまでお手伝いします。」

[1983.01 「営業力開発」 日本マーケティング研究所]]