使える戦略思考
-ダイナミックな競争優位創造のマーケティングエクステンション
第2回 戦略の構想

2004.10 代表 松田久一

本シリーズの目指すべきところは「自分で戦略を組み立てるようになる」ということです。戦略思考を学び使えるようになりたい人のために解説をします。

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3.優れた戦略を構想するための鍵

(1)

外部環境を柔軟に創造的に捉える

 では、どのような戦略が最も優れた戦略なのか。ひとつは、戦略というのは思考から言うなら、自分の会社が対応している環境、すなわち業界構造をどのように認識するかということと、自分たちの強みとか弱みとか、そういうものをどのように認識するか、のふたつになります。別の言い方をすれば、外の見方と内の見方を組み合わせて、人・物・金の配分を決めるということです。

 ここで、ポーターの戦略論が非常に標準化されているのは、外の見方というのは業界構造、業界構造は五つの力によって決まるとしていることです。内というのはポーターの場合は競争優位ということで、競争優位というのは、他社と比べてどんな活動を主活動とか支援活動で行っているかです。つまり、どれだけ他社とは違う九つの活動を行っているかということです。その組み合わせで人・物・金の配分を考えていくとしています。こうした時、最も優れた戦略とはどのようなものかというと、目的を達成するための最も合理的な戦略思考が最も優れたものであるというのが答えのひとつです。

 そして、もうひとつは、実はこの自分たちの競争優位というものを客観的に見てみた場合(その客観性というのは殆ど、冷静にクールに分析していくことですが)、誰でも同じ見方になるという帰結になります。つまり、そこには創造的な要素というのは、あまりないことになります。強いものは強いし、弱いものは弱いのです。そうすると、創造的要素というのはどこに出てくるかというと、外の見方にあるということです。一見、外というのは調査とか色んな分析を含めて非常に客観的な戦略が組み立てられるように見えます。しかし、経営というのは非常に不確実な状況の中で行われていており、一寸先は闇の中ということができます。その一寸先をどう読んでいくかという所が非常にクリエイティヴなところであり、同時にリスキーなところです。リスキーであるが故にまた収益性が得られるということでもあります。

 「最も優れた戦略とは何か」の二番目の答えは、最も優れた外部環境の解釈を行うということです。これにはふたつあって、ひとつは、限られた情報の中で最も論理的に合理性を持ったものを考えていくというのが、最も優れた戦略であるし、もう一方で、これから市場がどうなっていくか、これから市場関係がどうなっていくか、これから業界がどうなっていくかということについて、確実な所をどう読んでいくかということになります。その読み方に基づいて自分の所の資本とか資源を考えていって、人・物・金の配分を変えるということです。それでそこの所で誰も予測できなかったことを予測し、思い切って重点を掛けて資源を割り振った所が、最も優れた戦略ということになります。

[2004.10 MNEXT]

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