I. 消費社会をどう読むか

1.消費トレンドを読む

消費の読み方・食生活の行方

2016.07 代表 松田久一

 本コンテンツは、2016年6月16日に開催された「ネクスト戦略ワークショップ 品質競争下の食品市場の成長戦略」での講演に加筆・修正を加えたものです。


 今回のワークショップでは、消費の読み方と食生活の行方、ライフスタイルの変化についてお話ししたいと思います。


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消費は「なぎ」状態

 今の消費は、「なぎ」状態といえます(図表1)。消費の増加への追い風もなければ、向かい風もない状態です。

図表1 「なぎ」状態の消費
図表

 8%から10%の消費増税の延期が決まり、無風状態です。総務省が出している家計調査からも、消費が伸び悩んでいることが分かります。アベノミクスで恩恵を受けたのは、金融資産や不動産を持っている人たちでした。お金持ちの動向は、1日8万人、三越伊勢丹グループ全体の7割の利益を稼ぎ出す伊勢丹新宿店の売り上げに反映されるといいます。同店は、今年3月に対前年比で売り上げがマイナスになりました。個人的にも、これはショックでした。また、商品別にみると、フロア改装を行った「婦人服・用品」も落ち込んでいます。その婦人服の数字がよくないというのは、伊勢丹の戦略が間違っているということを示しています(図表2)。

図表2 特定カテゴリーの売上動向
図表

 マイナス金利や株安などの影響から、お金は安全資産に流れています。そういったことが、伊勢丹新宿店の売り上げからも読むことができます。婦人服などの落ち込みとは対照的に伸びている品目が、「食品」です。ここ2、3年は、アベノミクスの影響で、宝飾品が伸びていました。しかし、その流れが止まりました。一方で、比較的好調なのが「食品」です。

 これはどういうことなのか。消費はフラットですが、その中身が変わってきているということです。ライフスタイルそのものも変化しています。ここで言うライフスタイルとは、「財の購入と所有パターン」という意味です。持ち家戸建て、自家用車、教育投資のような財の購入と所有パターンが変わってきているということです。

 結論から言うと、これまでの郊外型の「平面型ライフスタイル」から都心型の「垂直型ライフスタイル」への転換が起こっています。