眼のつけどころ
新年、思い切って消費楽観論。

2016.01.18 代表取締役社長 松田久一

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 消費は浮上する可能性がある。アベノミクス以後に2万円を超えた日経平均株価は、新年から急落し、約15%も下がっている。およそ20兆円程度の含み益はぶっ飛んだ。逆資産効果で、消費水準は低下するとの見方が大勢であろう。

 しかし、消費サイドと供給サイドでは見方は異なる。さらに、中流層が分解し、階層意識が強まる社会では、とらえ方が違ってくる。むしろ、消費を下振れさせている予想外の増税負担感が軽減され、消費が好転する可能性が生まれている。

 仮説を少し説明する。日銀が、異次元の金融緩和策をとり、対ドルで円安へと流れが変わって、輸出企業の収益は大幅に回復した。輸出企業を中心に株価は上昇し、1万円を切っていた日経平均は2万円を超えるまでになった。消費は、階層意識が強まるなかで、株や土地などの価格上昇による資産効果によって、富裕層の「張り合い」消費による高級時計などの高額品が牽引した。他方で、中流層は、消費税増税が重くのしかかっていた。

 この流れを変えたのが、2015年12月にアメリカのFRB(連銀)が行った金融緩和の転換による利上げである。さらに、統計では捉えられない中国経済の失速、テロや難民の受け入れ策の違い、ドイツのひとり勝ちによるEUの分裂危機と経済低迷、そして、新興国や世界的な景気低迷の結果による原油安とISISをめぐる中東危機などが世界で起こっている。これらの地政学的リスクと世界的な成長鈍化によって、日本の債権を中心としたドル売り円買いのリスク回避の流れが生まれた。対ドルで120円を切る状態である。当然、輸出企業の収益悪化から株安へと転じた。株などのリスク資産は減少し、富裕層の含み益は減少した。逆資産効果で富裕層の消費牽引力は低下する。