眼のつけどころ 【特集:消費を読む】
消費の「落ち込み」を読む

2016.05 代表 松田久一

 印刷用PDF(有料会員サービス)

01

3月度家計調査ショック

 景気の動向、特に消費の先行き不透明感が増している。総務省の2016年3月「家計調査」では、消費統計を代表する「二人以上の勤労世帯」で、実質、名目ともに4.9%の減少となった。前年同月比は95%、消費増税前の一昨年同月比は名目で87%、実質で85%だ。(図表1)

図表1 消費支出の名目及び実質伸び率(前年同月比)の推移
図表

 一方で、実収入は、名目、実質ともに0.3%増加し、有効求人倍率や完全失業率は改善が続くなど、雇用も堅調である。物価指数(総合)は、マイナス0.1%である。エコノミストによって「念仏」のように唱えられる「収入が増えれば消費が増える」説に反して、3月の消費は落ち込んだ。

 この結果には、私見ながら少々驚き、ガッカリした。一般的な消費動向と個別企業の商品サービスの売上との間には、直接的な因果関係はない。しかし、消費の「空気」や「風向き」が悪化すれば、個々の企業の業績にも響いてくることになる。

 どうして消費は落ち込んだのか。一時的なものなのか。それとも構造的なものなのか。この小考で解いてみたい。