I. 消費社会をどう読むか

3.時代の流れを読む

ドラマの主題歌に見る世代心情について
-歌は世に連れ、世は世代に連れ

2011.02 代表 松田久一

2010年12月28日に行われました、松田久一の社内講演「ドラマの主題歌に見る世代心情について」を元に作成しております。尚、文中では人名の敬称を略させて頂いております。

 「歌は世に連れ、世は歌に連れ」とよく言われます。歌は時代によって変わり、時代は歌によって変わる、という意味です。

 人々の心情は、時代のヒット曲、特に歌詞に現れると思います。楽曲の作詞者たちは、今の状況をどのように捉え、人々の心情を理解し、表現者として何をメッセージとして伝えようとしているのでしょうか。本コンテンツでは、「歌は世代に連れ、世は世代に連れ」という時代論と世代論の視点から、2010年のドラマの主題歌8曲を取り上げ、歌詞と作詞者の世代を切り口に質的分析することによって、今年の一般的な人々の心情を世代別に抽出してみようと思います。

 21世紀に入り早10年。世界的に見た19世紀から20世紀への転換期は、およそ新しい世紀に入って10年ぐらい経過して生まれています。20世紀から21世紀も同じような経緯を繰り返すとすれば、転換期はこれから訪れるし、実感としても、世界が根本的に変わろうとしている始まりは「今」であるように思っております。

 日本では、「閉塞感」という「空気」が世の中を支配しています。そんななか、新しい突破口を求めて、「日本とは何か」、延いては、「自分とは何か」というアイデンティティがあちこちで問われています。大衆的な心情も「閉塞感」に支配されているように思えますが、その閉塞感が一番表現されているのが、ヒット曲における歌詞だと考えました。

 というのも、一般的な人々の多くは、自らアイデンティティへの問いに答え、表現しようとしている訳ではないからです。確かに、ネットの発達によってブログやツイッターなどの表現手段とメディア(媒介)は広がっています。しかし彼らは表現することを職業にした人ではなく、ブログやツイッターの発言から大衆的心情を見出すことは極めて困難なことだと思うのです。寧ろ、専門の表現者が創造したTVドラマを見たり、楽曲を視聴・購入したりする結果として、大衆的心情や世相が集約されていると考えたほうが効率的です。

 そこで、2010年のヒット曲のうち、自分の恣意的な好みでしかありませんが、8曲を取り上げました。これら8曲の作詞者が、表現者として今の状況をどのように捉え、人々にどんなメッセージを伝えようとしているのかを、言葉の質的分析によって探っていきたいと思います。また、作詞者の属する世代から、世代別に心情を抽出してみようと思います。

 作詞者達は、各々が抱く考えは自分にしかわからない、という心情に駆られています。そしてそれを、多くの人々に伝えたい、表現したい、と考えます。そうすると、メッセージは誰にでもわかる、いわば手垢のついた言葉という「記号」となって表現されます。表現者は、ひとつひとつの言葉を選択し、吟味し、メタファー(喩)や物語を通じて、自分の表現したいことを伝えようとします。従って、歌詞の要素となっているテーマ、コンテキスト、ストーリー、メタファーに注目することで、表現者の世代性や時代性をうかがうことができ、さらに、それに共感を示している一般の人々の心情を読むことができます。これは、吉本隆明や見田宗介などが先行的にやってきた手法です。とても彼らには及びませんが、同じようなことを試みてみようと思います。