I. 消費社会をどう読むか

2.消費リーダーを斬る

買われるためのマーケティング・タワー
-市場シュリンク下の多角的マーケティング・アプローチ-

2010.11 代表 松田久一

本稿は、2010年10月19日に行われた中部産業連盟懇話会【嫌消費世代のマインドと市場攻略】での講演録を加筆修正しております(編集:舩木龍三・嶋田恭子)。

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なぜ消費が低迷しているのか?

 リーマンショック以後、弊社クライアントのメーカーのみなさまから、モノが売れていかない、という厳しい状況をよくおうかがいします。なぜモノが売れないのか...?一般的に、収入が減ったからだという指摘があります。家計調査年報によると、確かに収入は、1998年では58万8,916円だったのに対し、2009年の最新データでは月51万8,595円と、右肩下がりで下がり続け、約7万円減少しています。月々の消費支出も1998年では35万3,552円だったのに対し、2009年は31万8,853円と約3.5万円減少しています。ということは、やはり、消費の低迷は収入の低迷が原因だ、と言えると思います。

 ただ、収入に対する支出の割合のことを、平均消費性向と言いますが、平均消費性向の動きを見ますと、これもだんだん下がっている。これが意味することは、収入が下がる具合よりも支出の方が大幅に下がっているということです。つまり、収入が減っている以上に、支出をしない金額が増えていると。消費低迷の本当の要因はここにあると思います。

 また、節約意識が強くなったことも原因のひとつでしょう。弊社が2009年12月と2010年4月に行った独自の節約意識の調査では、ともに全体の7割近くの方が「節約を心がけるようになった」と回答しております。バブル崩壊後、節約意識が浸透しましたが、「いつかは節約疲れがきて、消費は回復する」と期待されていました。ただ、20年たった今も節約疲れはまだ起こっていない。節約というのが、ひとつのスタイルとして定着してしまっていると考えられるのです。

 もうひとつの理由は、弊著「『嫌消費』世代の研究」で焦点を当てておりますが、現在27歳~31歳にあたる「嫌消費」世代という新しい世代の登場であると考えています。私は50代半ばですが、私にとっては息子・娘にあたる年代の彼らは、我々とは全く違う消費スタイルをもっており、それが消費の低迷をリードし、他の世代にも波及していっていると思うのです。

 先日、ザ・ニューヨーク・タイムズの記者が取材に来ましたが、ディスインフレという、インフレでもデフレでもない、物価が上昇しない時代が20年続いた国は、歴史上、日本以外にないそうです。我々50代はインフレを経験しているんですが、今の20代というのは、常に物価が下がった状態しか経験していない。ザ・ニューヨーク・タイムズの記者は、リーマンショック以後、アメリカでも同じ現象が起こるのではないか、ということを危惧しており、そういう国で育った人達はどういう風になるのか、に興味があったようです。

 我々の年代は、自分たちが20代だったときと重ねて彼らを理解しようとします。同じ日本人なので、確かに理解しあえる部分もあるんですが、この「嫌消費」世代は、我々とは全く違う価値意識をもっており、特に消費のレベルになるとお互い理解できないほどに全然違うのです。

 本日は、この世代の消費スタイルにはどのように対応していけばいいか、また、この世代にどのようにモノを売っていくか、というお話していきたいと思います。

書籍イメージ

2009.11 東洋経済新報社 発行
定価 1,500円+税

「嫌消費」世代の研究

独自の大規模調査をもとに、若者の「買わない心理」の深層に迫る。

「クルマ買うなんてバカじゃないの?」
若者の消費が変化している。若者はなぜ、物を買わなくなっているのか。そこには巷間ささやかれている「低収入」「格差」「非正規雇用の増加」以上に深刻な、彼ら独特の心理=「劣等感」が強く影響している。本書では「収入が十分あっても消費しない」傾向を「嫌消費」と名付け、大規模な統計調査とインタビュー調査をもとに、「嫌消費」を担う世代=20代後半の「買わない心理」の原因と深層に鋭く迫る。 「世代」という観点から市場を捉え、世代論の手法で将来を遠望した一冊。