I. 消費社会をどう読むか

2.消費リーダーを斬る

消費嫌いのバブル後世代

2009.07 代表 松田久一

 およそ50項目の価値意識の調査を実施した。その結果、価値意識が対極にある世代を見つけることができた。「バブル後世代」と「団塊の世代」である。少々、意表を突かれる結果だったので紹介してみる。

図表.バブル後世代と団塊の世代
図表

 「お金を使うことには慎重な方だ」の項目では、バブル後世代は53%、団塊の世代は48%の賛成率だった。5%の差があった。「親の老後は子供がみるべきだ」の項目には、バブル後世代は45%、団塊の世代は26%の支持率だった。約19%も差があった。比較してわかる通り、バブル後世代は、お金により慎重でまさに親孝行の世代だ。一般的な通念に頼れば、バブル後世代の方が、お金に甘くて親不孝と思いがちだ。しかし、実際は反対だ。

 われわれが「バブル後世代」と呼んでいるのは1980年代生まれで現在20代後半だ。そして、団塊の世代は、50代後半から60代前半である。いろんな意識が親子以上の年の離れたふたつの世代で対照的だ。特に、顕著なのは欲しい商品サービスなどの消費意識である。

 団塊の世代は、それぞれのライフステージで、新しい商品市場をつくり、ブランド確立に貢献してきた。浪費はしないが、節約世代とまではいかない。学生時代には、ソフトドリンクでは「コーラ」、ジーンズでは「リーバイス」、オーディオでは、「パイオニア」、車では「シビック」などのブランド確立に貢献した。老後も「おひとりさま」感覚で楽観視している面もある。

 バブル後世代は彼らに比べて消費嫌いである。「車なんか要らない。持っている人の気が知れない」、「大型テレビなんか邪魔だ。ワンセグ付き携帯があればいい」、「海外旅行は日本語が通じないから疲れる」と言う。将来が不安だから、「とりあえず、30歳までに1,000万円を貯めればなんとかなる」、「両親の介護を考えるといくら預貯金をしても間に合わない」と本気で考えている。

 この意識の差はどこから来ているのか。それは将来についての見方と自分の評価から来ている。団塊の世代は、将来について楽観的だ。いくら少子高齢化に伴う人口減少や経済成長の鈍化などの課題を抱えていても何とかなると考える。これまでの経験で裏付けられた自信によってそう信じている。しかし、バブル後世代は違う。自信につながる何かをやり遂げた経験者は少ない。終身雇用、年功序列もなければ、手厚い社会保障もない。さらに、戦後最大の就職氷河期を体験し、実社会から受け入れられなかった体験を持っている。負の体験が自信のなさに拍車をかける。同じ将来の見方でも、バブル後世代はより悲観的に見ることになる。

 バブル後世代は、これらから30代になり、結婚、子育てなどの家族形成期に入る。最も支出が増えるライフステージである。しかし、彼らがこれまでの世代のように、車、家電や海外旅行に支出するとは思えない。「明るい未来を抱き、親不孝で、消費好き」という20代の通念を捨てることがリアルビジネスには必要だ。

[2009.7 日立SQUARE]

書籍イメージ

2009.11 東洋経済新報社 発行
定価 1,500円+税

「嫌消費」世代の研究

独自の大規模調査をもとに、若者の「買わない心理」の深層に迫る。

「クルマ買うなんてバカじゃないの?」
若者の消費が変化している。若者はなぜ、物を買わなくなっているのか。そこには巷間ささやかれている「低収入」「格差」「非正規雇用の増加」以上に深刻な、彼ら独特の心理=「劣等感」が強く影響している。本書では「収入が十分あっても消費しない」傾向を「嫌消費」と名付け、大規模な統計調査とインタビュー調査をもとに、「嫌消費」を担う世代=20代後半の「買わない心理」の原因と深層に鋭く迫る。 「世代」という観点から市場を捉え、世代論の手法で将来を遠望した一冊。