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I.消費社会をどう読むか
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3.時代の流れを読む
年収300万以上の世帯が90%を占める
中流市場の攻め方
代表 松田久一
 企業の価格政策をめぐる動きが急である。イトーヨーカ堂やイオンなどの大手組織小売業は、自社の割安なプライベートブランド(PB)の比率を上げようとしている。液晶テレビなどの情報家電の値下げは続き、家電量販店の値引き競争は激しさを増すばかりである。他方で、東京都心の高級ホテルの平均宿泊代は従来の5万円台から7万円台以上へとアップし、都心の百貨店の改装は中高年向けの高額品で溢れ、従来品より30%高いハーゲンダッツのドルチェが好調であり、サイズやカロリーに配慮した割高なスナック菓子なども売れている。相変わらず、スーパーで2丁100円に対して1丁350円以上の豆腐も売れている。一方では、低価格化と値下げが進み、他方では、高価格化と値上げが進行している。
 この背景には、消費者の収入階層の変化がある。消費者の価格への感度である予算制約は収入によって変わる。収入が多くなれば予算は大きくなり、逆に、減少すれば予算は小さくなる。従って、選択される商品サービスの組合せが変化することになる。
 グラフは1970年から5年ごとに物価の変化を現在価値に換算して世帯の年収を比較したものである。2006年現在では、約89%が中流層(「中の上」、「中の中」、「中の下」の合計)に属している。生活レベル意識も約90%が中流の意識を持っている。1970年以降、収入階層で見る限り、1995年までは一貫して増加し、それ以降は減少傾向が見られるものの中流層が圧倒的な多数を占める。この意味で日本社会が年収300万円以上の収入層が圧倒的多数を占める中流社会であることに変わりはない。長い経済不況、失業率の上昇、非正規雇用の増加、実力主義賃金体系への移行によって、日本の社会の下層化が進行していると指摘されてきたが、基本的な趨勢に変化は見られない。しかし、中流内での上下の階層移動が見られる。それは、「中の上」の微減、「中の中」の減少、「中の下」の増加である。また、実際に消費支出を増やし、市場を牽引しているのは中高年層を主体とする「中の上」である。

世帯の収入階層の変化
Graf


 つまり、企業の価格政策に二極分化的な対応の違いが見られるのは、中流の収入階層の分化が進み、市場の牽引力に着目して、「中の上」の収入階層により高付加価値の高価格政策で対応するか、寧ろ、市場の量的側面に着目して、「中の下」の収入階層によりコストパフォーマンスの高い低価格政策で対応するかの違いであることがわかる。どちらがより賢明な手かは多数派である「中の中」層がどちらに牽引されるかである。
 このような価格感度の異なる消費者へのより賢明な対応は、価格差別化戦略を採ることである。日本マクドナルドは、都市部では値上げを、地方では値下げをする、地域ごとに異なった価格を設定する実験を始める。より高収入の都市部の顧客層には高価格を、より低収入の地方の顧客層には低価格を提示するのである。この政策は、人件費などのコストの地域的な違いによる説明などによって顧客の理解が得られるならば異なる収入層で構成される需要に対応するもっともうまい方法であり、製品差別化に対して価格差別化と呼ばれる。パソコンやソフトなどが収入の少ない学生や教育関係者により安く販売される事例が典型である。中流層が主役の市場を攻める原則は、中庸な商品サービスを中価格帯で攻めることではなく、顧客を収入階層で分けて異なった対応をすることである。
[2007.6 日立SQUARE]

【参照コンテンツ】
エリア変動が生み出す「新中流層」(2007年)
ちょいリッチ層がワンランクアップ消費をリードする(2007年)
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