I. 消費社会をどう読むか

3.時代の流れを読む

目に見えない消費リスクの増大-新たなビジネス機会

2002.04 代表 松田久一

01

ペイオフ解禁

図表.リスクテイク行動がみられない日本人
図表

 金が売れている。ペイオフ解禁に伴って、1,000万円以上の定期が元本保証されなくなる。来年には、普通預金も保証されなくなる。その預貯金が、収益資産である金へと流れているのである。雑誌やテレビ報道も、ペイオフに備えて、様々な処方箋をだしている。とりあえず、普通預金への切り替えや利子がなくても預け入れ上限のない郵便貯金への預け代えを進めている。価格変動リスクはあるが高収益をもたらす資産ではなく、まったく収益のない元本保証を第一にした資産選択を推奨しているのである。常識的な経済合理性から言えば、リスクに対処するにはリスクを分散させることである。現在の日本の消費者が望んでいるのは、リスクを分散させて高収益を得る合理的な資産選択行動(ハイリスクハイリターン)ではなく、リスクを回避して、確実な元本保証を得る選択行動(ノーリスクノーリターン)である。このリスク回避志向は、グローバルに比較しても明確である(図表参照)。

 これを突き詰めていけば、限りないキャッシュ志向、現金崇拝の「タンス預金」へと向かうことになる。GDPの年間消費の約5倍である約1,400兆円の個人金融資産が現在の日本には積みあがっている。個人の家計にすれば年間消費支出の約5年分という預貯金があることになる。親から借金をしてまで消費が旺盛だった大学生に最近話を聞くと10人中10人が貯金をしていると答える。しかも貯蓄目的は、「予備的動機」、すなわち、「万が一のため」である。親に養ってもらって、アルバイトして預貯金である。どうやってリスクを回避するかが、年代、世代を問わず、現在の日本の消費トレンドとなっている。しかし、不思議なことに、リスク回避をビジネスとする保険サービスが消費者の信用を得られずもっとも苦境に喘いでいるという事態にある。これでは物やサービスが売れるはずがない。しかし、逆転の発想に立つと、リスクを回避できる商品サービスへのニーズが最も高まっているとみることができるのである。