I. 消費社会をどう読むか

3.時代の流れを読む

新しいマーケティングの潮流

1997.01 代表 松田久一

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激変する消費の時代

 現代は消費の時代ととらえられる。日本全体の需要(GDP)は約480兆円で、その構成は政府が10%、企業の設備投資が30%、個人消費が60%になっている。不況が始まった91年から日本経済はゼロ成長であり、その間、政府は需要をつくろうと公共投資を行い、その金額は4年間で67兆円にも上っている。これは戦後始まって以来の景気対策予算である。しかし、景気回復の見通しは、日銀の報告によると「やや回復過程にある」というものである。

 我々の経済社会はいつの間にか全く個人消費の時代になってしまっている。どんなに政府が公共投資をし、お金を使っても個人消費が動かない。個人消費が動かないと企業設備投資も動かないという形で悪循環を続けていたのがこの4年間である。不況は、円高よりも個人消費が伸びなかったことに根本的原因があると見ていい。

 個人消費の内訳を見ると、290兆円の中で私たちが衣食住に必要な支出は50%で、残りの50%は選択支出である。必需支出は生理的条件に依存する。一方、選択支出については毎月、日本の家計では約37万円の収入が入ってくるが、そのうち半分の16~17万円は出先が決まっていない、いつ使うかわからないお金である。これは身体的、生理的条件より、価値観や生き方、考え方、ライフスタイルに依存した消費になる。これからの日本経済を考えると、明らかに個人消費の時代が来ている。その中でも、必需支出から選択支出の時代になっている。その選択支出を決めているのはライフスタイルであり、生活の仕方が私たちの消費を決定している大きな要素になっている。

 現在、景気回復過程で売れているものは、第一番目はパソコンで95年の国内出荷は550万台と実に80年の5倍の伸びを示し、今年度は750万台になると言われている。東京圏の普及率は30%である。第二番目にブランドものが売れている。例えば、フェラガモは国内売上高前年比で125%と大変な伸びを示している。特に、シャネルを中心とした欧米のブランドものが元気がいい。第三番目はマシェリ(資生堂のシャンプー)。これまでの消費財メーカーが低価格戦略で低価格商品を出したのとは異なり、今年度からナショナルブランドが売れ始めており、その代わりにプライベートブランドが余り元気がない。第四番目は携帯電話、第五番目が海外通販で、インターネットで購買することも含めてL.L.ビーンの対日通信販売額は前年比192%に伸びている。

 パソコンは周辺産業も含めると大きいが、そのほかは弱々しい。それが消費回復の見極めのポイントになっている。これまでは、家電、自動車など何がリーディング商品になるか見えたが、今は見えない。住宅と弱々しい商品が売れ筋であり、共通するものは、ブランドものである。シャネラー、グッチャー、プラダーなどと呼ばれ、渋谷や原宿あたりでは上から下までシャネルやグッチでまとめた中・高生が見られる。欧米では上層階級のブランドだが、単品買いではなくそれを全部身につけていることが特徴的である。最近の日本ではひとつのトータルなライフスタイルとして提案されているもの、これまでにない価値を持ったものを買う傾向が顕著に見えてきている。

 現在、パソコンを買う第一の理由はインターネットである。パソコンを手に入れると、かつてコロンブスがアメリカ大陸を発見したと同じ意味合いで、ひとつ踏み込むと大変な世界である。世界で8,000万人の人が使い、1千数百万ページのホームページを次々に見ていくと、どんどん新世界に乗り込んで行ける。未来の生活を先取りできることが、パソコンが売れている背景にある。携帯電話も、これまでと違う人との関係の仕方を持てる。L.L.ビーンもアウトドアのひとつのスタイルを提案している。個人消費を考えていくとき、生活様式、生活スタイル、ライフスタイルの新しいものが、今の時代に求められているのである。