I. 消費社会をどう読むか

3.時代の流れを読む

不況下のディスカウントの波

1993.07 代表 松田久一

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生活費3割削減

 ディスカウントストアが強い。家電製品はもちろんのこと、背広、ネクタイ、ハンドバックまで広範な商品にまで広がってきた。免許業界の典型である酒類でも、その販売比重は地域によっては2桁の数字にのっている。経済企画庁の「店舗形態別購買行動等調査」によれば、背広のディスカウンターでも購入者は27%にまで広がっている。ディスカウンターの好調、百貨店の不調を裏付ける結果となっている。不況下で強まっているディスカウント期待はどこまで広がる可能性をもっているのかここではこのことを新しい消費トレンドとしてとりあげてみたい。

 なぜ、今、ディスカウントなのか。理由は三つある。ひとつは、言うまでもなく「不況」だからである。失業者はほとんどいない。給料も下がっていない。しかし、残業時間が激減している。バブル時代の残業時間と比べると半分以下になっている。このことが、実質的な可処分所得を減らしている。これが第一にある。不況になって、新設住宅着工戸数が対前年同月比を割った。次に、車、家電等の大型選択消費が減った。さらに、外食が減った。つぎに、海外旅行も減った。今年に入って、スーパーの食費が対前年同月比を割った。

 もうひとつは、「もう必要なものは揃っている」という意識が強いことだ。消費という側面からみると、80年代の景気を支えてきたのは、「選択支出」に分類される費目である。大型テレビや冷蔵庫等の家電、自動車もこれに該当する。今、削られているのはこうした費目に分類されるものである。必需支出に分類される費目は減っていない。今年の初めまで堅調だった食費と比べると顕著だ。こうした消費が抑えられるのは、「もう必要なものは揃っている」という意識が強いことだ。この意識が「1円でも安いものを買う」という期待を生み出している。

 三つ目は、バブル消費の象徴とも言われた「高級ブランド」への信頼感が失われたことにある。価格への信頼感が壊れたところで、低価格志向を生む結果となっている。その典型が、背広、スーツだと言ってよい。これまで、20~30万円していたものが、半額以下になる。同じところで生産されたスーツに販売先が異なるだけで倍以上の値段の差が生まれている。こうした事実がロコミや雑誌を中心に拡大している。生活者の価格への信頼が崩れた結果が、ディスカウント期待を高めている。

 今の消費は、「生活費3割削減」の時代と言ってよい。この生活の基本ニーズに、もっとも応えているのがディスカウントストアである。この期待は、どこまで広がるのだろうか。家電製品に関する調査結果からみてみることにする。