I. 消費社会をどう読むか

1.消費トレンドを読む

変わる家計構造と投資感覚

1998.10 代表 松田久一

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節約トレンド

 「買わないこと」がひとつの消費トレンドになり始めている。「クリーニングは出さず家で」、「まず食費を切り詰める」、「特売日にしか肉は買わない」などの節約ノウハウが主婦の間で持て囃されている。平成10年度7月現在の消費支出の対前年同月比は次のとおりである(「家計調査」)。

  • 全世帯  (3.29人)  330,559円  ▲3.4%
  • 勤労世帯 (3.48人)  359,107円  ▲4.0%

 全世帯では9ヶ月連続して対前年同月比を割り込んでいる。この影響は、小売業全般、特に大手小売業の業績に深刻な影響を及ぼしている。8月の異常気象、9月の中間決算での大手メーカーの惨澹たる状況を考慮すれば、今年度の消費は極めて厳しいものになることは言うまでもない。

 なぜ、消費が回復しないのか。これまでの景気回復の過程は、公共投資や輸出による好業績産業が牽引して、被雇用層の所得が上昇し、一部の消費が回復し、他産業に波及し業績が上向き、消費が回復していくというものであった。この循環メカニズムがまったく効かない。なぜ、効かないのか。ひとつは、高業績企業はあっても高業績産業がないことである。リーディング産業が見当たらない。さらに、高業績企業の業績がリストラによってもたらされていることである。もうひとつは失業率の高さにある。4.3%という戦後最大の失業率が消費回復を遅らせている。さらに、この失業率の高さが雇用不安をもたらし、消費マインドを冷え込ませている。