I. 消費社会をどう読むか

1.消費トレンドを読む

消費不況下の街コミ・トレンド

1998.07 代表 松田久一

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消費不況とヒット商品

 消費不況のなかでも数多くのヒット商品が生まれている。なかでも、消費不況に家電不況が重なる家電業界でも、見えるラジオ、平面画面のテレビ、ミニディスク(MD)プレーヤー、デジタルスチルカメラ、ノートパソコンなどがヒットしている。赤ワインも絶好調である。ペット関連サービスも急成長、占いも大ブーム。ワールドカップ関連の盛り上がりも凄い。外資系流通業も元気がいい。アメリカンカジュアルのファッション店を展開するギャップ(GAP)、アウトドア商品のエディバウアーなどのアメリカ系資本は、ハンバーガーチェインのマクドナルド、おもちゃチェインのトイザラスの成功を見本例に快進撃を続けている。

 企業の業績に目を転じれば、重電系メーカーは苦境にあるが、ソニーは97年度経常利益が約1200億円、前年度比増減率は約39%増である。日産は苦しいがホンダは元気。ディスカウント業界は全般に苦境だがドンキホーテは伸びている。全国展開の大手量販店は厳しいがローカルの食品スーパーは強い。

 不況下のヒット商品や企業業績を並べてみると、ふたつのことに気がつく。ひとつは、不況は、経済や業界などの環境の平均であって、主体的な個別企業の成功の鍵ではない。波は高いがどう船を操るかが成否を決めているということである。もうひとつは、ヒット商品や好業績企業があまり知られていないということである。

 特定の男性ヤング層で、シルバーアクセサリーが流行っている。特に、クロス(十字架)をモチーフにしたデザインと手作りがハリウッドのタレントに熱狂的に受け入れられたクロムハーツは圧倒的な人気を誇る。しかし、40代以上でこのブランドを知る人はほとんどいない。播磨屋本店の「朝日あげ」(おかき)は美味しい。これも一部の女性層にしか知られていない。近年、コンビニやスーパーで、スキムミルク、ココア、シナモン、みりんが突然売れ出して品切れになる「事件」が起きた。「ためしてがってん」(NHK)や「おもいっきりテレビ」(NTV)などの健康関連情報番組がヒットを起こした。これも一部の主婦にしか知られていない。音楽業界でも、次々とミリオンセラーが生まれる。ミリオンセラーなら誰も知っているはずだが、今年度上半期大ヒットのエブリ・リトル・シング(ELT)の「タイム・ゴーズ・バイ(Time goes by)」を知る人は少ない。山口百恵以降、国民歌がなくなった。すべての世代、すべての家庭、すべての年代に共通するものがなくなった。