I. 消費社会をどう読むか

2.消費リーダーを斬る

社会消費のリーダー

1991.02 代表 松田久一

 激変。社会の激変が消費に影響を与えている。

 商品へ差異化願望と熱意が明らかに低下している。

 これまでの消費リーダーの牽引力が弱くなってきた。

 中高生が寄付に走り、OLが政治を語り、主婦が戦争反対を叫ぶ。激動する社会に目を向ける消費者が増えている。その結果、どの商品領域でも、商品への期待率は20~30%は低下し、リーダーが力を失っている。

 少なくとも、この10年、消費者が地球や社会に関心をもつことはなかった。一部の人のものだった。

 ところが近年の社会変動はとてつもないものがある。

 企業が提供する商品の価格帯も完全に一桁違い始めた。

 商品やサービスへの期待そのものが低下しているのに、購入価格帯だけは上昇している。

 この期待と購入価格帯の乖離を埋めているものは何か。

 5万円のビデオと30万円のビデオの差異は、機能や技術の差異では埋まらない選択になった。この差異のわかる人をかつてはマニアと呼び、今は「おたく」と呼んでいる。もう、市場をリードする力はない。ヤングが軽い、「そのノリ」で衝動買いするには価格のハードルは高すぎる。バブルで財布の緩んだ人も少なくなった。

 誰がこの消費を、内需をリードしているのか。

 ハードルを跳び越している消費者は、明確な価値観と新しい消費倫理観をもった人々である。西洋には、隣人愛というキリスト教の根強い倫理観がある。この倫理観が、大英博物館、文化、芸術を支えている。

 新しい消費倫理観を持った人々が、商品の選択基準に、個人から社会や地球という軸を、「好き嫌い」に「正しいことか正しくないことか」という軸を導入し始めている。

 この人々が、社会消費を生み、新しいリーダーとして登場した。豊かな社会の商品開発の課題は、いかに値段の高い商品をつくるかではなく、新しい消費の倫理を生み出すことだ。いざなぎ景気をこの8月で越えられるかどうかは、この社会消費のリーダーにかかっている。

[初出 1991.02 「営業力開発」 日本マーケティング研究所]