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カルフールは日本で成功するか
戦略分析チーム 合田
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■カルフールの概要
 去る12月8日、売上高世界第二位の小売業カルフール(仏)が千葉市幕張に開店、日本進出を果たした。この日「カルフール日本上陸」のニュースが多くの紙面を飾った。同社は幕張店を皮切りに、今年1月16日には南町田店(東京都町田市)、2月6日には光明池店(大阪府和泉市)を開業する。計画では2003年までに計13店を出店する予定だ。「カルフールが出店したあとにはペンペン草も生えない」と言われる(日本経済新聞2000.12.19)ほどだが、果たして日本で成功するのか、考察してみたい。
1.世界第二位の小売業

図表1 カルフールの売上高推移


図表2 世界の小売業トップ20

 カルフールの1999年の売上高は2,451億フラン、円換算では約3兆9,215億円である。売上高の対前年伸び率は136.3%で、この大幅増加は提携関係にあったコントワール・モデルヌの統合により同社の売上高が加わったこと、11月に合併したプロモデス(いずれも仏SM企業)の2ヶ月分の売上が加わったことによる(図表1)。さらに表中の「新グループ試算値」は、カルフール、プロモデスの両グループが完全に統合済みと仮定して(両社の年間の損益を合体)、1999年の連結損益をカルフールが試算したものである。これによると売上高は3,408億フラン、5兆4,521億円に達する。この規模は、世界ではウォルマートに次ぐ第二位である(図表2)。
2.カルフールの歴史
 では、カルフールの戦略展開の歴史を追ってみよう。

(1)ハイパーマーケット業態の開発と国内での勢力拡大(1958年~1968年)

 カルフールの設立は1959年である。設立から4年後の1963年には、パリ郊外に巨大なセルフサービス店を開業し、「ハイパーマーケット(以下HM)」(売場面積2,500平方メートル超の食品主体のセルフサービス店舗)の元祖と言われるようになった。その後はHM業態を主力に順調にフランス国内での勢力を拡大していった。

(2)欧州内拡大(1969年~1974年)

 国内の大型店出店規制(ロワイエ法)と市場の飽和化を見越して、カルフールは早い段階から海外に活路を求めた。1969年に初めて国外進出に乗り出し(ベルギー)、1970年にスイス、1972年にイギリス、イタリア、1973年にはスペインに進出した。しかしベルギー、イギリスからはその後撤退しており、成功はイタリア、スペインなど相対的に流通の近代化が遅れたラテン系の国に限られた。 

(3)中南米、アジアへの進出(1975年~1997年)

 同社の海外展開は、1970年代半ばからは中南米・北米エリアへと広がり、1975年にブラジル、1981年にアルゼンチンへ進出した。1989年には北米への進出を果たしたが、業績が予想を大きく下回りわずか3年で撤退した。  一方、米大陸への上陸と並行してアジア地域にも進出した。1989年台湾に出店し、ある程度の成功をおさめると、1994年以降マレーシア、中国、タイ、韓国へと順次進出、展開地域はフランスを含めて22ヶ国にまで広がり、売上高の38%が母国以外での実績となった(図表3、4)。

図表3 国別にみたカルフールのハイパーマーケット店舗数の推移
図表4 新グループの地域別売上高

(4)マルチチャネル化(1998年~現在)

 海外進出が一段落した1998年、同社の戦略は大きく転換する。注力業態をHMからSM(売場面積2500平方メートル以下の食品スーパー)に重点を移す方針を明らかにし、1998年にはそれまで段階的に出資比率を高めてきたコントワール・モデルヌを完全に統合、1999年にはプロモデスとの合併を決定し、SMを主力する両企業を取り込んだ。さらに2000年にはネット販売のための新会社「@カルフール」を設立した。このようにして同社はハイパー専業から、HM、SM、eリテイルの複数のチャネルを持つ企業へと転身した。

 このようにカルフールは、欧州、中南米、アジアへと段階的に出店エリアを広げるとともに、M&Aによって成長を遂げた。カルフールにとって日本とはその経済規模、消費水準からみても非常に魅力的な国であり、世界第二位のグローバルリテーラーとして成長していくために避けては通れない国であったと考えられる。 
3.日本市場の攻め方
 日本における実績は明らかにされてないが、幕張店は開店して10日たっても、40台のレジは常に20人以上の長蛇の列だと言われている。 カルフールは、日本をどんな店舗でどう攻略しようとしているのか。まず同社の店舗の特徴を、幕張店を例にみた上で、今後の出店の方向性をみてみたい。

(1)幕張店の特徴

 まずカルフール幕張店について、同社がセールスポイントとしている点を列挙する。

1)3万平方メートルの巨大売場

 幕張店の店舗面積は2万9,941平方メートル(カルフール直営1万7,014平方メートル、専門店7,535平方メートル、共用5,392平方メートル)で、近隣のコストコ、ガーデンウオーク幕張と比較して1万平方メートル以上広い。カルフール直営のスペースは1階には生鮮、加工食品、日用雑貨、カフェスタイルのフードコートを設けている。2階では衣料品、家電製品、家具等を扱っている。これらをあわせたトータルの品目数は6万品目(このうちPBが7000品目を占める)にのぼり、同社の一般的なHMにおける品目数(食品3,000~5,000品目、非食品2~3,500品目)と比較しても多い。

2)選択肢の多様化

 幕張店では、専門店スペースに「ユニクロ」「ABCマート」等48店が軒を連ねている。当然衣料専門店の商品とカルフール直営の衣料品はバッティングすることになるが、「消費者にチヨイス(選択)の機会が与えられることが,大きなプラスになる。日本にはチョイスという概念が欠けていた。」(カルフール・ジャパン、シニアマーケティングマネージャー)としている。一方生鮮においても同じような考えから、普通のスーパーでは規格外として店頭に置かない大きく曲がったキュウリや,農場で収穫されたまま葉っぱを落としていない巨大なキャベツも、品質に問題がなければ商品として扱っている。価格にも幅を持たせ、低価格品、多少値が張るが品質のいい物といった具合に、同じ商品群で幅広い価格帯を設けている。

3)思わず欲しくなる演出

 カルフールが最大の売りにしているのがインストアベーカリーとチーズ、惣菜売場である。ここでは品揃えや提供方法にフランスらしさがでている。インストアベーカリーではフランスから取り寄せた石釜で焼いたパンを焼きたての状態で陳列、チーズ売場では30種類のものを専門店のように量り売りしている。惣菜売場では串刺しされたチキン40羽が大型オーブンの中で回転し肉汁がしたたる。直径1mほどの大きな鍋では焼かれたパエリアが音を立てる。調理場と売場が一体化し買い物客の食欲をそそる演出が特徴だ。これを同社では「展示販売方式(お客さまの目の前でものをつくり、お見せしながら販売する)」と呼んでいる。  

4)直接取引による低価格

 カルフールの最大の特色は、メーカーとの直接取引によるライバル店の2割~5割安という徹底した低価格戦略だ。幕張店で扱う商品の直接取引の比率はメーカーとの交渉が難航し、最終的には55%になったが、これはどんな日本の小売業も達成できなかった数字だ。直接取引に応じた企業の一つ、明治製菓は、納品はケース単位、日曜配送は不要を条件に契約に踏み切った。物流は、埼玉県内の明治製菓のセンターから幕張の店舗へ商品を直送するというもので、そのため同社のスティックチョコ「フラン」は他店よりも低価格で提供されている。ただ、多くのNBは他店と比較して安くはなく、価格競争力は一部の商品に限定されている(図表5)。

図表5 幕張周辺・主要大型店舗の価格比較 12月8日カルフール開店日

5)コンセプトを持った小売業

 10月20日の記者会見でカルフールのダニエル・ベルナール会長は、日本での勝算はあるかという問に対して、「(日本は)競争相手は多いものの、新しいコンセプトを持った流通企業が入り込む余地がある」と答えた。ではそのコンセプトとはどのようなものなのか。それは「パリのマルシェ(市場:いちば)のにぎわい」である。カルフール・ジャパン、シニアマーケティングマネージャーは「出店は急がずに進める。コンセプトを最大限に発揮できる店舗を作っていきたい」と語っている。

(2)出店戦略

 カルフールは幕張店を橋頭堡として今後どのように日本で勢力を拡大しようとしているのか。他国での成功事例をみていくと、同社には、他国で勝利していく際、ある共通の出店パターンというものがある。一言で言えば「市街地包囲作戦」とも言えるものである。それは都市中心部と郊外の境界線を縫うように市場をおさえていくことで、その狙いは「都市中心部への流入を妨げ、一方で中心部からもお客さんを奪う」というものである。
 例えば、進出後10年で23店を出店し、地場のスーパーを押しのけてトップ小売業の座についた台湾では、台北、台中という中核都市において、中心部から20km、車で小一時間程度のエリアに円を描くように複数の店舗(3店~6店)を配置した。結果中心部に近い小規模なスーパーは足元を救われ経営難に陥っていった。中国でも大都市に的を絞り11都市において中心部の周辺に複数の店舗を展開して成功した。このように決して中心部には足を踏み入れず、中心を包囲するような布陣は母国で成功したモデルであり、各国共通のパターンと言えそうだ。
 カルフールは、今年1月に南町田店(東京都町田市)を、2月に光明寺店(大阪府和泉市)をそれぞれ開業する。さらに、名古屋市、大阪府の箕面市、泉佐野市のほか、奈良、兵庫への進出のための交渉を進めていることが明らかにされている。全13店のうち8店までがこれで明らかになったが、同社がこれまでの勝ちパターンを踏襲するとすれば、残りの5店も東京、大阪、名古屋のような大都市を包囲するように出店されると予測される。
4.カルフールは日本で成功するか

(1)カルフールの勝ちパターン

 同社の海外進出における過去の成功事例をみると、成功した国々には、ある共通の市場条件が存在することが確認できる。
 成功例は、アジアでは、台湾、中国、タイ、マレーシア、インドネシア、中南米のブラジル、アルゼンチン、欧州ではイタリア、スペイン、ポーランド、チェコ、ギリシャ、ベルギーである。これらの国々は、カルフールが地場のスーパーを押しのけてトップの座を奪うまでに至った国やトップとはいかないまでもその国の売上高ランキングで第3位、4位につけた国である。その成功要因としては、百貨店や小規模なSMチェーンはたくさんあっても大規模なチェーンストアが地場になかったこと、同社が得意とする家電や衣料品の大型DSがなく、競争相手が不在だったこと等が一般に言われている。
 このような見方も踏まえ、成功した国々に共通する点を改めて整理してみると、それは 1) 組織小売化が進んでいないこと、2) 大規模なチェーンスーパーが地場にないこと、33) 家電や衣料品等において競争相手となる専門店がないこと、4) 地価が安く十分な立地スペースが得られること、5) 大規模店舗を阻む規制がゆるい、のように捉えられる。このことと先の出店パターンとを総合すると、カルフールが海外進出で勝利するパターンとは、「流通が未発達な国で市街地を包囲する出店によって地場の小売業を圧倒していく」ものとして捉えられる。

(2)日本における成功の可能性

 こうした認識にたつと、日本は先に挙げた5つの条件をいずれも満たさない。日本は、多くの地場のチェーンストアを始め家電や衣料品の強い大型専門ディスカウント業態があり、下落傾向にあるとはいえ地価が高く、他国に比べると大型店の出店規制も厳しい。これらから、従来の勝ちパターンは日本には通用しないと考えられる。
 実際、カルフールには母国フランスを除いて、いわゆる流通が発達している先進国での成功例がない。1972年に進出したイギリスでは2、3店を出店し10年は維持したものの、業績が振るわず店舗を売却して徹底した。一方米国には1989年にフィラデルフィア郊外のショッピングセンター、92年にニューヨーク郊外のロングアイランドにそれぞれ売場面積1万7,000平方メートルの大型HMを開店したが、売上高が予想を大幅に下回り92年に両店舗を閉鎖して撤退した。さらに昨年9月には香港からの撤退を表明した。
 カルフールの日本における成功は、先進国における新しい勝ちパターンを創造できるかどうかにかかっている。そのために、世界第二位のグローバルリテーラーの威信にかけて巨大な資金が日本に投下されるはずだ。同社が、直接取引を強みとして日本の商慣行をどこまでうち破れるか、多様な選択肢と効果的な売場演出によってどこまでローカルな競争を制していけるのか、今後の動向に注目したい。

(2001)



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