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| 止まらない「激安」ジーンズデフレ |
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不況と世代交代のインパクト
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| 本稿は、「週刊エコノミスト2009年11月17日号」掲載記事のオリジナル原稿です。 |
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 1.激安ジーンズが絶好調
不要不急な衣料品販売では、不況下においては少しでも財布の紐を緩めてもらうために、低価格競争に陥りやすい。「ユニクロ」などを展開するファーストリテイリングのブランドg.u.(ジーユー)が今年3月に990円のジーンズを発売した。これがきっかけとなり、その後、イトーヨーカ堂やイオンといった総合スーパーが最低価格を競うように追随し、激安ジーンズ競争が激化している。同10月にはディスカウンターのドン・キホーテも、690円のPBジーンズを販売し、参戦を果たした(図表1)。
現在までのところ、激安ジーンズは各社とも販売目標を上方修正する勢いで好調に推移している。g.u.では当初目標の50万本から2ヶ月足らずで100万本へと目標修正した。セブン&アイの「ザ・プライス」(5万本目標)も完売の見込みで追加発注を行っている。ドン・キホーテでも初回入荷分は既に完売し、次回11月の入荷待ちという状態である。8月に激安ジーンズを発売したイオンでは、9月度の衣料品売上が8ヶ月ぶりに対前年同月比を超えた。激安ジーンズがお客様を引きつけ、ジーンズだけでなく、他の衣料品のついで買いも生み出していることが推測される。総合スーパーでは、長らく不調であった衣料品販売に光が差し始めている。
 2.激安のための四つの取り組み
ジーンズは他の衣料品と異なり季節性が無いという特徴があり、海外工場に生産を委託する際も閑散期も含めた安定した発注が可能なため、コスト削減が可能な商品である。さらに、ジーンズは生地の質や縫製、仕上げの加工など細かく様々に手間を掛けることもできるが、逆にこうした部分を割り切って生産することでコストを削減できる余地も大きいという特徴を持っている。
各社が激安でジーンズを提供するための取り組みには、大きく四つのポイントがある。ひとつは、より低コストな生産地の選択である。これまでは中国での製造が多かったが、人件費が上昇しており、東南アジアの他の国へとシフトしている。g.u.では、中国で生地を調達し、カンボジアで縫製している。同様に西友はバングラディシュで縫製を行っている。ふたつは、低コストの原材料開発である。イオンでは綿100%ではなく、ポリエステルを入れたり、糸が細い独自素材を開発し、コストを削減している。三つは、アイテム(サイズや色)は限定的な展開としているところが多い。唯一、g.u.のレディスでは22色のバリエーションがあるが、レングスは2種類程度に絞られており、原材料の生地の削減に繋げている。四つは、調達コストの削減である。西友では親会社のウォルマートストアーズの国際規模の調達網を、ドン・キホーテもグループ化した長崎屋の調達網を活用し、コスト削減を行っている。また、ダイエーでは取引先の一元化や小分け作業は自社で行うなどしてコストを抑えている。
 3.ナショナルブランドとカジュアル衣料チェーンが苦戦
各社の激安ジーンズが好調に推移する中、ナショナルブランドとそれを販売するカジュアル衣料チェーンでの苦戦が目立ち始めている。リーバイスを展開しているリーバイ・ストラウス・ジャパンの2009年11月決算期の第3四半期までの累計売上高は、約132億円で、前年同期比で19.7%の減少となっている。また、日本のジーンズでは草分け的な存在であったボブソンでは、そのブランドを投資会社のマイルストーンターンアラウンドマネジメントが設立する新会社に譲渡し、別ブランドの子供服の製造販売に事業を集約する。
また、こうしたナショナルブランドを販売するカジュアル衣料チェーンも苦しんでいる。ジーンズメイトでは2010年2月期の連結営業損益見通しをこれまでの2,000万円の黒字から3億9,000万円の赤字へと下方修正した。同様にマックハウスやライトオンの売上推移をみても、前年同月比を下回る月が多いことが確認できる(図表2)。ジーンズメイトでは、ナショナルメーカーの在庫を引き受けることにより仕入れ価格を抑え、1,990円ジーンズを5月に投入した。4万本を完売したが、9月には2万本程度の販売に留まっており、突破口は見つかっていない。
激安ジーンズだけでなく、ユニクロやしまむら、さらには、ZARA、H&M、フォーエバー21など外資系のファストファッションの進出にも押され、カジュアル衣料チェーンの苦況は深刻さを増している。
 4.不況と世代交代のインパクト
激安ジーンズ登場の背景となっているのは、2008年のリーマンショックから始まる世界同時不況である。不況下では、堅実な節約型の消費行動が主流となる。このため、割高感のあるものは敬遠される。この不況下で割高なものを買う、身に付けているということは他人からもいかがなものかと見られてしまう。定価で買うジーンズのナショナルブランドには割高感が持たれ、逆に安く生産するための様々な訳があり、そこそこのお洒落が楽しめるユニクロが不況下で賢い選択であると評価される。こうした不況下の消費意識がナショナルブランドの受難を生み出している。
図表3.ジーンズ製品生産・仕入(輸入含む) |
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図表4.縮む消費支出 |
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ジーンズの生産本数そのものも2006年から逓減基調で推移しているが、特に、現代の若者ではジーンズ離れが進んでいる(図表3)。例えば、ジーンズを含む男子ズボンの消費支出を家計調査報告で確認してみると、1980年の世帯主年代別20代の家計の平均支出金額は5,231円だったが、2008年の20代の家計では3,135円となっている(図表4)。
ジーンズは1970年代に団塊世代がファッションに取り入れた。この時は、リーバイスというブランドが受け入れられた。続く断層世代はリーバイスでも「501」というように、品番への拘りを生み出した。その下の新人類は、バブル期にDCブランドを支持し、デザイナーズブランドのジーンズが流行した。しかし、ブランドを支えたのはこの世代くらいまでで、団塊ジュニアでは無印良品へ、現在の若年世代では一部のお兄系といわれるジーンズを支持する層もいるがマジョリティではない。それよりも割高なナショナルブランドを買うということそのものが若年世代では好まれていない。激安ジーンズ好調・ナショナルブランド不調は、不況という経済環境条件だけではなく、こうした世代交代による影響が表出した結果でもある。
 5.ナショナルブランドメーカーに求められる割高感の解消
景気の底打ちという見解と二番底へ向かうという見解が現在は錯綜しており、先行きに関して予断を許さない状況である。ナショナルブランドにとっては、不況下で下がった値頃感、養われた割高なものを見極める選択眼を考慮した戦略的な展開が求められる。方向は三つ考えられる。ひとつは、ブランドの価値をより高める方策を展開し、激安ジーンズとはレベルの違うパフォーマンスを追求するという考え方である。ふたつは、思い切って現在の値頃感に合わせられるまでコスト削減し、ブランド価値と値頃感のバランスを取るという考え方である。三つは、少しお得に購入してもらうプロモーションの展開を通じ、賢く購入したという経験をして頂くことで再評価を得るという考え方である。
一方、好調にみえる激安ジーンズも手放しではいられない。極限まで絞り込んだコストと引き替えになる品質などに対する消費者の評判、また、使い捨て的な衣料品の増発による環境への悪影響という指摘、さらにはCSR調達など製造過程にまで踏み込んだ企業の社会的責任への関心の高まりへの対応など、足元をさらに固める必要がある。
本論文執筆は、当社代表松田久一による貴重な助言や協力のもとに行われました。ここに謝意を表します。
(2009.11)
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