「値入」とは「商品の販売価格(売価)を決定する」ことをいいます。「値入率」とは、商品の販売価格と仕入れ原価の差額の販売価格に対する比率を表したもので、
値入率(%)=(販売価格-仕入原価)÷販売価格×100
で算出します。粗利益率の算出方法も上式で同様に求めることも可能ですが、値入率が商品を販売する前の見込みを示すのに対し、粗利益率は商品販売後の実績値を示している点に留意が必要です。
GMS(総合スーパー)のダイエーは初期の成長期では、当時高価だった肉を目玉商品として扱い、値入率を下げ、仕入原価同然で販売し集客する一方、野菜や加工食品などを関連販売し、そこでは値入率を高くして、利益を稼ぐ値入率ミックスという施策を採って、大きな成果を上げていました。
また、EDLP(エブリデー・ロープライス)を標榜するウォルマートでは、「高く仕入て安く・高回転で売る」を実践しており、日本のGMSが20~30%程度の値入率であると言われるのに対し、17~18%の値入率と言われています。本来のEDLPは、このように、低い値入率で低マージンながら、店舗の維持費用を削減する、無理なディスカウントセールを行なわず、在庫のコントロールを容易にするなどの施策で高回転させるところに運営の鍵があります(戦略ケース「値上げか値下げか-消費低迷下の価格戦略(2008年)」に詳しい)。
さて、粗利益率を上げるには、「値入率を上げる」、「ロス率を減らす」などの方法があり、現実的にはその両方を狙って動きます。
値入率を上げるには、「原価を低減する」か「売価を上げる」かその両方かになりますが、売価は競合店との競争状況を勘案しながら自社がコントロールできる一方で、原価低減は仕入先(卸売業者やメーカー)との取引交渉を要します(戦略ケース「直接仕入れで収益改善を狙うイオンの戦略(2008年)」に詳しい)。また、ロス率低減のためには、ロスの実態とその要因を検討する必要があります。ここで、仕入先との協業によって低減できるロスが無いのかを検討することが大切です。仕入原価の値引きを闇雲に交渉するのではなく、協業を通じて相互メリットを生む取り組みを提案することが現実の解決策に繋がります。
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