ブルー・オーシャン戦略とは、競争者のいない新しい価値の市場を創造し、ユーザーに高付加価値を低コストで提供することで、利潤の最大化を実現する戦略です。未開拓で無限に広がる可能性を秘めた未知の市場空間を「ブルー・オーシャン」、反対に多数の競争者で激しい「血みどろ」の競争を繰り広げる既存の市場を「レッド・オーシャン」と呼びます。
ブルー・オーシャン戦略は、フランスの欧州経営大学院(INSEAD)教授のW・チャン・キムとレネ・モボルニュにより、2005年2月に発表された著書『ブルー・オーシャン戦略』で提唱されました。ブルー・オーシャン戦略を実践する上で、もっとも重要なポイントは、新しい価値市場を創造するための「バリュー・イノベーション(価値革新)」という考え方により、市場の境界線を引き直すということです。本書では、そのためのツールやフレームが多数提示されています。中でも「アクション・マトリクス」「戦略キャンバス」が重要なツールとして考えられます。
アクション・マトリクス
「取り除く」「増やす」「減らす」「付け加える」という四つのセグメントに、自身が身を置く業界や他社の取り組みを当てはめ、自社の事業を再整理するツール。現状の競争要因に対して、自身がどのように変化すれば、ブルー・オーシャンを創造できるかを整理します。また、「増やす」「付け加える」と同時に「取り除く」「減らす」ことで、高付加価値を低コストで実現できる可能性を見い出します。
戦略キャンバス
競争要因を横軸に、縦軸はそのレベルを表し、自社の取り組みと他社の取り組みを比較するツールです。各競争要因の点を結び合わせた線が、他社の線と異なる場合は、新たな市場を創造できる可能性が高いと確認することができます。
上記では、既存市場内からの新価値市場の創造となっていますが、代替産業や補完材・サービス等の視点から、新価値市場の創造を実施することも有効な手段です。
一見、差別化戦略のようにも捉えられますが、「競争戦略」という視点ではなく、「高付加価値を持つ新市場の創造」ということに主眼に置かれます。いわば、差別化を突き詰めることで、新たな競争のない市場を創造するということです。そのため、上記のようなツールを活用し、市場を再定義することが、この戦略においては重要となります。
既存のサーカスとは異なる、大人が楽しめる新しいエンターテインメントを創造した「シルク・ドゥ・ソレイユ」、コストを重視する人にスピード(10分)と低価格(1,000円)のヘアカットを提供するビジネスモデルを創造したQBハウス、リモコンを使った新しいゲームの楽しみ方で、テレビゲームになじみのない層も開拓した任天堂Wiiなどが、ブルー・オーシャン戦略の成功例と捉える事ができます。
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