半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net


(2018.04)
月例消費レポート 2018年4月号
消費は一旦足踏み状態となっている
主任研究員 菅野 守

 JMR消費INDEXは、2018年1月時点まで、上昇傾向を保っている(図表1)。INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出水準関連指標では、2018年2月に消費支出と平均消費性向の2項目が再び悪化に転じた。預貯金の伸びもプラスが続いており、消費にはマイナスに寄与している。販売関連指標では、2018年1月時点で、全10項目中、改善が5項目に対し悪化が5項目となり、改善の側と悪化の側とが拮抗していた。2018年2月時点では、判明している9項目中、改善が4項目に対し悪化が5項目となっており、わずかながらも悪化の側が優勢となっている。2018年3月時点では、判明している8項目中、改善が5項目に対し悪化が3項目となっており、改善の側が優勢となっている。支出水準関連指標は再び悪化の方向に転じているのに対し、販売関連指標では、悪化の動きが優勢の場合と改善の動きが優勢の場合とに時折揺れ動きつつも、悪化と改善双方の動きが拮抗している。2018年1月と同様、2018年2月においても、両指標間で方向感が定まらない状況に変わりはない(図表2)。

 公表された2018年2月以降の各種経済指標から、消費を取り巻く状況を整理すると、消費支出は2018年2月現在、勤労者世帯で名目と実質ともに伸びはマイナスに転じている。二人以上世帯では、名目と実質の双方で伸びはプラスを保ってはいるが、伸び率の値は前月に比べ低下している。二人以上世帯をベースに、10大費目別にみると、名目では前月1月と同様、プラスの費目数がマイナスの費目数を大きく上回っており、実質では、プラスの費目数とマイナスの費目数とが等しくなっている。双方を勘案すると、10大費目別では引き続き、改善の側が優勢の傾向は保たれている(図表5、図表6)。消費者物価指数は2018年2月に、総合とサービスの指数の伸び率の値は前月1月よりも更に上昇するとともに、財の伸び率の値も前月並みで推移している。2018年2月時点でも、緩やかながらも物価上昇の動きは続いている(図表7)。販売現場での動きをみると、2018年2月現在、商業販売や外食などの日常生活財では、一部の業態を除き、伸びは引き続きプラスを保っている(図表11、図表15)。耐久財のうち、新設住宅着工戸数では、全体ではマイナス続いており、カテゴリー別でみても、一部を除き、伸びはマイナスとなっている。新車販売では、乗用車(普通+小型)で伸びはマイナスが続いており、軽乗用車でも伸びがマイナスに転じている。家電製品出荷では、白物家電で伸びはプラスが続いている一方、黒物家電で伸びはマイナスに転じている。耐久財では、カテゴリー間で好不調の格差を抱えながら、マイナスの動きが徐々に増えてきている(図表12、図表1、図表14)。雇用環境では、2018年2月に、完全失業率は上昇に転じるとともに、有効求人倍率も低下に転じている。息長く続いてきた雇用環境改善の動きにも、一旦ブレーキがかかった格好だ(図表8)。他方で、収入環境については、現金給与総額、所定内給与、超過給与額の全てで、2017年8月以降はほぼプラスを保ち続けている(図表9)。消費マインドに関しても、2018年3月現在、景気ウォッチャー現状判断DIと消費者態度指数の双方で、再び改善の動きに転じている(図表10)。

 経済全般の状況に着目すると、輸出はプラスを維持しているものの、その勢いは鈍化傾向にある。生産は反転上昇の動きを見せているが、2018年1月の大幅な落ち込みを取り戻すには至っていない(図表16、図表18)。マーケットの動向をみると、1月下旬から3月下旬にかけて、相場は円高・株安傾向で推移しており、特に2月以降は、株価は乱高下を続けた。3月下旬に相場は円安・株高に転じており、その後は4月下旬現在に至るまで、円安・株高傾向で推移している(図表21)。長期金利は、2月に入ってから3月下旬にかけて、緩やかな低下傾向で推移してきたが、3月下旬における円安・株高への反転と軌を一にして、その後は4月下旬現在に至るまで、緩やかな上昇傾向を保っている(図表22)。

 総合すると、消費は、強弱双方の材料が交錯する中で、一旦足踏み状態となっている。日常生活財は引き続き好調さを保っている反面、耐久財の低迷が消費の足を引っ張っている。消費を取り巻く諸条件でも、強弱双方の材料が交錯しており、今後の消費の見通しを定めにくい状況となっている。消費マインドが改善へと反転していることや、マーケットが円安・株高へと反転していることは、今後の景気や消費にとって前向きな動きと評価できる。この先、海外発の政治的・経済的なアクシデントを契機に日本の景気が変調に見舞われるようなことがない限りは、消費は早晩、再び堅調な推移を取り戻すと目される。

【図表を含めた完全版を読む】(有料・無料会員向け)
※会員のご登録はこちらをご覧ください。

参照コンテンツ


おすすめ新着記事

消費者調査データ コーヒー飲料(2024年3月版)独走「BOSS」、「ジョージア」との差を広げる
消費者調査データ コーヒー飲料(2024年3月版)独走「BOSS」、「ジョージア」との差を広げる

プラスが続くコーヒー飲料の市場についての調査結果をみると、23年調査に引き続き「BOSS」が全項目で首位を獲得、さらに2位の「ジョージア」とは、3ヶ月内購入で差を広げた。「BOSS」はエクステンションの「BOSS CRAFT」も高評価で、リーディングブランドとしての存在感を示している。

成長市場を探せ 3年連続で過去最高更新、拡大する麦茶飲料(2024年)
成長市場を探せ 3年連続で過去最高更新、拡大する麦茶飲料(2024年)

健康志向などを追い風に堅調な動きを続ける茶飲料市場のなかで、特に伸びている領域がある。3年連続で過去最高を更新した麦茶飲料だ。背景にあるのは、気候温暖化による毎年のような猛暑と、熱中症対策意識の高まりだ。

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い
消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

22年度、過去最高を更新した即席めん市場。その多くを占めるカップめんについての調査結果をみると、「カップヌードル」が絶対的な強さを示し、それを「赤いきつね/緑のたぬき」「日清のどん兵衛」が追う展開となった。一方で、節約志向を背景に、コストパフォーマンスに優れるPBの再購入意向も高い。



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツ プレミアム会員サービス 戦略ケースの教科書Online


新着記事

2024.03.21

24年1月の「旅行業者取扱高」は19年比で69%に

2024.03.21

24年1月の「商業動態統計調査」は35ヶ月連続のプラスに

2024.03.19

24年2月の「景気の現状判断」は12ヶ月連続で50ポイント超えに

2024.03.19

24年2月の「景気の先行き判断」は4ヶ月連続で50ポイント超えに

2024.03.18

成長市場を探せ 3年連続で過去最高更新、拡大する麦茶飲料(2024年)

2024.03.15

企業活動分析 スギHDの23年2月期は増収減益。26年度売上1兆円へ向けた挑戦が続く

2024.03.14

24年1月の「消費支出」は11ヶ月連続のマイナス

2024.03.14

24年1月の「家計収入」は16ヶ月連続のマイナス

2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

2024.03.12

企業活動分析 マツキヨココカラカンパニーの23年3月期はPB商品拡販やインバウンド需要増加で増収増益

2024.03.11

23年12月の「現金給与総額」は24ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

週間アクセスランキング

1位 2024.02.15

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 男性子育て層の約5割が利用 バンドワゴン効果で拡大する新NISA

2位 2023.12.27

2024年の日本を読み解く―24の視点

3位 2024.02.22

消費者調査データ No.402 RTD(2024年2月版) 「ほろよい」「氷結」「贅沢搾り」 熾烈なトップ争い

4位 2016.03.16

【マーケティングFAQ】どうすればブランド力を強化できるか

5位 2021.10.14

都心主要ラグジュアリーホテルのリバイバル戦略と行動直結プロモーション―産業衰退死段階の生き残り戦略【1】

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area