-政策転換を消費マインド改善の契機へと活かせるかが鍵
参院選投開票日の翌日に安倍首相より取りまとめの指示が出された経済対策は、当初予想の事業規模10兆円超から、20兆円規模へと引き上げられ、最終的には28兆円超に決まった。そのうち、景気の押し上げに直接つながる「真水」部分は7.5兆円で、GDP成長率を+1.3%押し上げると見込まれている。第二次安倍政権誕生以来で最大の事業規模の経済対策を打ち出したことは、「これ以上の景気悪化は絶対避けなければならない」という安倍政権の決意の表れともいえよう。
足許の景気の失速に対し危機感を抱いているのは、政府・連立与党だけではない。2016年7月28日と29日の両日に開催された日銀の金政策決定会合で、年間約3.3兆円から約6.0兆円へのETF買入れ額の増額なども含む、追加緩和措置の実施が決まった。日銀は、政府が大規模な経済対策を策定するのと歩調を合わせて、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を積極推進する姿勢を改めて打ち出した格好だ。
2016年7月25日公表の月例経済報告によると、景気の基調判断並びに先行き判断ともに、前回の2016年6月公表分に引き続き、据え置きとした。景気の基調判断では「景気は、このところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」とし、先行き判断では「雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復に向かうことが期待される」としている。景気の先行きに対するリスク要因についても、今回2016年7月は、前回6月公表時の表現をほぼ踏襲しているが、「海外経済の不確実性の高まりや金融資本市場の変動の影響」の具体例として、7月では「英国のEU離脱問題など」との文言が新たに盛り込まれている。個別項目のうち、業況判断については、前月6月の「慎重さがみられる。」から、今月7月は「慎重さが増している。」へと、判断は3ヶ月ぶりに下方修正されている。
政府と日銀はともに、英国のEU離脱問題などを契機に、海外発の経済的波乱要因に対する警戒姿勢をより一層強めている。上述の政府と日銀による施策の背景には、先行き不透明感がますます高まる日本経済に対し、財政と金融の両面から何らかの政策的支援が必要な段階に来ているとの判断が色濃く表れていると目される。
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