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(2011.11)
月例消費レポート 2011年11月号
政府の基調判断、6ヶ月ぶり下方修正。続く「円高・株安・低金利」
菅野 守



1.はじめに
 2011年も師走を目前にして、日本の景気は相変わらず、海外景況の不振とグローバルマーケットでの乱高下に翻弄され、回復にもたつくありさまが続いている。
 2011年11月24日に内閣府より公表された「月例経済報告(平成23年11月)」によると、景気の現状について、2011年9月の「景気は、東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にあるものの、持ち直している。」から、2011年10月は「景気は、東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にあるなかで、引き続き持ち直しているものの、そのテンポは緩やかになっている。」と文言が修正され、6ヶ月ぶりに基調判断は下方修正されている。2011年11月には、「景気は、東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にあるなかで、緩やかに持ち直している。」とし、基調判断は据え置きとしつつも、「テンポは緩やかになっている。」の方に力点が置かれていた前月10月とは逆に、11月は「持ち直している。」の方に力点が置かれた表現へと変更されている。先行きについては、2011年9月の「サプライチェーンの立て直しや各種の政策効果などを背景に、景気の持ち直し傾向が続くことが期待される。」という表現は、2011年10月並びに11月にも踏襲され、基調判断は据え置きとなっている。景気の下押しリスクをもたらす要因について、2011年9月の「電力供給の制約や原子力災害の影響に加え、回復力の弱まっている海外景気が下振れた場合や為替レート・株価の変動等によっては、景気が下振れするリスクが存在する。」という表現を2011年10月は踏襲したが、2011年11月には一部文言が追加修正されて「電力供給の制約や原子力災害の影響に加え、欧州の政府債務危機などを背景とした海外景気の下振れや為替レート・株価の変動、タイの洪水の影響等によっては、景気が下振れするリスクが存在する。」となっている。特に、変更の上で新たに加わった「欧州の政府債務危機などを背景とした海外景気の下振れ」という表現からは、EU諸国内での財政危機による混乱が日本経済にもたらす悪影響への強い警戒姿勢がうかがわれる。加えて、新たな海外の波乱要因として盛り込まれた「タイの洪水の影響」に対しては、内閣府で別途レポートをまとめることを表明するなど、並々ならぬ関心を示している。
 個別項目を見ると、設備投資は、機械受注の減少等を考慮し、2011年10月の「下げ止まりつつある。」から、11月は「下げ止まりつつあるものの、このところ弱い動きもみられる。」へと、6ヶ月ぶりに下方修正された。他方、倒産件数は、大震災関連の倒産が減少しつつあることを受けて、前月10月の「おおむね横ばいとなっている。」から、11月は「緩やかに減少している。」へと、2ヶ月ぶりに判断は上方修正されている。輸出は、前月10月に「横ばいとなっている。」へと6ヶ月ぶりに下方修正されたが、11月は10月の表現を踏襲し判断は据え置きとなっている。生産は、前月10月に「持ち直しているものの、そのテンポは緩やかになっている。」へと6ヶ月ぶりに下方修正されているが、11月は「緩やかに持ち直している。」へと文言を修正変更しつつも、判断は据え置いている。個人消費も、前月10月に「おおむね横ばいとなっている。」へと6ヶ月ぶりに下方修正されているが、11月は10月の表現を踏襲し判断は据え置きとなっている。
 海外経済の現状について、2011年10月は、2011年9月の「世界の景気は、全体として回復が弱まっており、アメリカでは、極めて弱いものとなっているほか、ヨーロッパ地域では、持ち直しのテンポが緩やかになっている。」との表現を踏襲し、判断を据え置いた。2011年11月は、「世界の景気は、ヨーロッパ地域で持ち直しのテンポが緩やかになっていることもあり、全体として回復が弱まっている。」へと文言が修正され、判断は基本的に据え置きとしたうえで、ヨーロッパの影響を強調した形に表現が改められている。先行きについても、2011年10月並びに11月は、2011年9月の「弱い回復が続くと見込まれる。」との表現を踏襲し、判断を据え置いている。
 海外経済の先行きに対するリスク要因について、2011年10月は、2011年9月の「ただし、景気が下振れするリスクがある。また、このところの金融資本市場の動きに留意する必要がある。」との表現を踏襲していたが、2011年11月には更に踏み込んで、「ヨーロッパ地域の一部の国々における財政の先行き不安の高まりが、金融システムに対する懸念につながっていることや金融資本市場に影響を及ぼしていること等により、景気が下振れするリスクがある。」とし、EU諸国内での財政危機による混乱がもたらす悪影響への懸念を強調する表現となっている。
 地域別にみると、アメリカに関して、2011年10月は、2011年9月の「極めて弱い景気回復になっている。先行きについては、極めて弱い景気回復が続くと見込まれる。また、失業率の高止まりや住宅価格の下落等により、景気が下振れするリスクがある。さらに、このところの金融資本市場の動きや財政緊縮の影響に留意する必要がある。」との表現を踏襲し判断を据え置いたが、2011年11月は「アメリカでは、弱い景気回復になっている。先行きについては、弱い景気回復が続くと見込まれる。」へと文言が修正され、現状認識と見通しについて上方修正含みの判断が示されている。中国に関しては、現状判断と先行きともに、2011年9月から2011年11月にかけて判断は据え置きとなっているが、景気の下押しリスクをもたらす要因について、2011年9月までの「不動産価格や物価の動向に留意する必要がある。」から、10月には「金融資本市場の動き」が、11月には更に「欧米向け輸出の動向」が新たに盛り込まれており、中国景気の下振れリスクに対する警戒感をにじませる内容となっている。インドに関しても、現状判断と先行きともに、2011年9月から2011年11月にかけて判断は据え置きとなっているが、景気の下押しリスクをもたらす要因について、2011年9月までの「物価上昇によるリスクには留意する必要がある。」から、10月以降は新たに「金融資本市場の動き」が加わっている。その他アジア地域に関しても、現状判断と先行きともに、2011年9月から2011年11月にかけて判断は据え置きとなっているが、景気の下押しリスクをもたらす要因について、2011年9月までの「欧米向け輸出の減少や物価上昇により、景気が下振れするリスクがある。」から、10月には「金融資本市場の動き」が、11月には更に「タイの洪水の影響」が新たに盛り込まれている。ヨーロッパ地域に関しては、現状判断と先行きともに、2011年9月から2011年11月にかけて判断は据え置いているものの、11月にはEU各国の状況として「一部に弱い動きがみられる。」点を強調した表現に改められている。景気の下押しリスクをもたらす要因について、11月は「ただし、一部の国々における財政の先行き不安の高まりが、金融システムに対する懸念につながっていることや金融資本市場に影響を及ぼしていることにより、景気が低迷するリスクがある。」とし、EU諸国内での財政危機がもたらす悪影響を前面に打ち出した表現へと修正変更されている。
 11月の報告内容を見る限り、政府は、財政危機の混乱で揺れるEU諸国に止まらず、長期化し解決の見通しが立たない洪水により経済活動が麻痺しているタイも含め、二重・三重で押し寄せてくる海外発のダウンサイドリスク要因に対し、警戒姿勢を益々強めている。会議終了後の記者会見の場で古川元久・経済財政担当相から出された「株価や為替レートの変動、欧州との直接的な輸出入、今回の危機の影響を受けた他地域との輸出入、金融システムへの影響などを通じ、実体経済に影響が及びうる」といったコメントからも、日本の景気の先行きに対する政府の危機感がにじみ出ている。

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