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(2011.08)
月例消費レポート 2011年8月号
震災ショックから回復への動きも、高まる景気の下ぶれリスク
菅野 守



1.はじめに
 日本経済は、東日本大震災がもたらしたショックを乗り越え、回復の動きを進めてきたが、目下、実体経済とマーケット双方からの新たなショックにさらされ、景気の下ぶれリスクが高まりつつあるようだ。
 2011年8月10日に内閣府より公表された「月例経済報告(平成23年8月)」によると、景気の現状については、前月7月の「景気は、東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にあるなかで、このところ上向きの動きがみられる。」から一部文言が変更され、8月は「景気は、東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にあるものの、持ち直している。」へと、基調判断は2ヶ月ぶりに上方修正された。先行きについては、7月の「サプライチェーンの立て直しが進み、生産活動が回復していくのに伴い、海外経済の緩やかな回復や各種の政策効果などを背景に、景気が持ち直していくことが期待される。」から、8月は「サプライチェーンの立て直し、海外経済の緩やかな回復や各種の政策効果などを背景に、景気の持ち直し傾向が続くことが期待される」とし、基調判断は据え置きとするも、今後の景気回復の持続への期待感をにじませた表現となっている。景気の下押しリスクをもたらす要因について、前月7月は「電力供給の制約や原子力災害及び原油高の影響に加え、海外経済の回復がさらに緩やかになること等により、景気が下振れするリスクが存在する。また、デフレの影響や、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意が必要である。」としたが、8月は一部文言が変更されて「電力供給の制約や原子力災害の影響、海外景気の下振れ懸念に加え、為替レート・株価の変動等によっては、景気が下振れするリスクが存在する。また、デフレの影響や、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意が必要である。」としており、特に、新たに加わった「海外景気の下振れ懸念」と「為替レート・株価の変動等」の表現により、輸出の不振や円高・株安が日本経済にもたらす悪影響への懸念を鮮明にしている。
 個別項目を見ると、個人消費は、スーパーなど小売での売上高の回復や旅行の減少幅の縮小を好感し、前月7月の「下げ止まっている。」から、8月は「持ち直しの動きがみられる。」へと、3ヶ月連続で判断は上方修正された。住宅建設は、前月の「東日本大震災の影響もあり、弱い動きがみられる。」から、8月は「下げ止まっている。」へと、判断は上方修正されている。生産は、自動車関連産業を中心とした動きを踏まえ、前月7月の「東日本大震災の影響により減少していたが、上向きの動きがみられる。」から、8月は「サプライチェーンの立て直しにより、持ち直している。」へと、判断は上方修正された。輸出も、前月7月の「上向きの動きがみられる。」から、8月は「持ち直しの動きがみられる。」へと、判断は上方修正された。
 海外経済の現状については、前月7月の「世界経済は、全体として回復が緩やかになっている。」から、8月は「世界の景気は、全体として回復がさらに緩やかになっており、アメリカでは、極めて弱いものとなっている。」へと、判断は2ヶ月ぶりに下方修正された。注目すべきは、世界経済全般の判断のところで、「さらに」の文言を加えることで海外景気の鈍化を強調していることに加え、特にアメリカの景気鈍化に対する警戒姿勢が明確に打ち出され点である。先行きについては、前月7月と同様、8月も「緩やかな回復が続くと見込まれる。」とし、判断は据え置いている。海外経済の先行きに対するリスク要因についても、前月7月の「ただし、欧米及びアジアの景気が下振れするリスクがある。」から、8月は「景気が下振れするリスクがある。」とし、特定地域に依存しない海外全般の景況感の悪化を示唆している。
 地域別にみると、アメリカに関しては、現状について前月7月の「景気回復が緩やかになっている。」から、8月は「極めて弱い景気回復になっている。」とし、判断は2ヶ月ぶりに下方修正されるとともに、アメリカの景気失速を強調する文言となっている。
 先行きについても、前月7月の「緩やかな回復が続くと見込まれる。」から、8月は「極めて弱い景気回復が続くと見込まれる。」とし、下方修正含みの表現に改められている。
 景気の下押しリスクをもたらす要因については、前月7月までの「失業率の高止まりや住宅価格の下落等により、景気が下振れするリスクがある。」に加え、8月には新たに「さらに、財政緊縮の影響に留意する必要がある。」の文言が加えられている。その他アジアに関しては、現状について前月7月の「総じて景気は回復しているが、このところ弱い動きもみられる。」から、8月は「総じて景気は回復しているが、回復テンポが緩やかになっている。」とし、下方修正含みの表現に改められている。先行きについても、前月7月の「回復傾向が続くと見込まれる。」から、8月は「緩やかな回復傾向が続くと見込まれる。」とし、下方修正へとトーンダウンしている。景気の下押しリスクをもたらす要因については、前月7月までの「欧米向け輸出の動向や物価上昇によるリスクに留意する必要がある。」から、8月は「欧米向け輸出の減少や物価上昇により、景気が下振れするリスクがある。」へと文言が修正され、海外発の景気失速をより強調した表現となっている。ヨーロッパ地域、中国、インド、はいずれも、現状と先行きともに判断は据え置きとなっている。
 8月の報告内容を見る限り、政府としては、東日本大震災以降の景気の順調な回復ぶりを受けて、現状については楽観的評価を下してはいる。だが他方で、アメリカをはじめとする世界経済の失速が一層鮮明となり、円高・株安も予想外の勢いで進んでいることを受けて、それらが日本の景気への悪影響に対する警戒姿勢を前月の報告時以上に、益々強めつつあるようだ。

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