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(2010.05)
月例消費レポート 2010年5月号
国内外に課題山積。足取り不安定ながらも回復に向かう景気
菅野 守



1.はじめに
 ややもたつきながらも、景気は回復への歩みを進めているようだ。
 2010年5月24日公表の2010年5月の月例経済報告によると、景気の現状については4月と同様、「景気は、着実に持ち直してきているが、なお自律性は弱く、失業率が高水準にあるなど厳しい状況にある。」とし、2ヶ月連続で基調判断を据え置いた。先行きについても前月と同様、「先行きについては、当面、雇用情勢に厳しさが残るものの、企業収益の改善が続くなかで、海外経済の改善や緊急経済対策を始めとする政策の効果などを背景に、景気の持ち直し傾向が続くことが期待される。」として、実質2ヶ月連続で判断を据え置いている。景気の下押しリスクをもたらす要因については、ギリシャの財政問題を端緒としたヨーロッパ経済の低迷懸念の台頭から、「欧州を中心とした海外景気の下振れ懸念」という形でヨーロッパの景気を強調した文言が盛り込まれるとともに、その結果として生じた急激な円高・ユーロ安や株価の下落など金融市場にもたらした余波を受けて、「金融資本市場の変動」が新たなリスク要因として盛り込まれ、先行きに対する警戒感が示されている。
 個別項目を見ると、国内企業物価については、石油や石炭などの原材料価格の上昇が続いていることを受けて、「このところ緩やかに上昇している」から「緩やかに上昇している」へと文言が一部修正された。それ以外の項目については全て判断据え置きとなっており、そのうち個人消費については「持ち直している」、設備投資は「下げ止まりつつある」とした。消費者物価については「緩やかな下落が続いている」として、日本経済が緩やかなデフレ状況にあるとの認識は崩していない。
 海外経済の現状については、前月の「景気は緩やかに持ち直している」から今月は「景気は緩やかに回復している」へと、5ヶ月ぶりに上方修正された。先行きについても同様に、前月の「緩やかな持ち直しが続くと見込まれる」から今月は「緩やかな回復が続くと見込まれる」へと判断は上方修正されている。ただし、海外経済の先行きについては、ギリシャ発の欧州問題を背景に、金融資本市場の変動などを下方リスクに追加した。ただし景気停滞のリスク要因として、ギリシャの財政問題を火種とした「ヨーロッパを中心とする金融市場の変動の深刻化」が新たに文言として盛り込まれている。地域別にみると、米国とその他のアジア地域については現状と先行きともに判断は上方修正され、中国、インド、ヨーロッパ地域については現状維持となっている。ただし、ヨーロッパ地域については新たに「ギリシャ財政危機により、他のヨーロッパ諸国の財政状況やヨーロッパの金融システムに対する懸念が高まる」旨の文言が盛り込まれ、前月よりも「金融市場の変動が更に深刻化するリスク」への警戒がより一層強調されている。
 月例経済報告等に関する関係閣僚会議終了後の会見で、菅直人副総理兼財務・経済財政担当相は、「景気の持ち直しは外需や経済対策にけん引されている面が大きく、自律的な回復とまでは言えない」との指摘の上で、先行きの不安材料として「欧州を中心とした海外景気の下ぶれ懸念や、金融資本市場の変動」を挙げている。今後の景気判断については、「景気の好循環が確かなものになっているかどうかが判断基準」とした上で、2010年6月10日に公表予定の1‐3月期GDP二次速報の改定値を踏まえて判断したいとの姿勢が示されている。
 津村啓介内閣府政務官からは、基調判断据え置きの背景として、「雇用の水準や設備投資、個人消費ともに、もう少し見極めるべき要素があり、今月は回復という表現は妥当ではないということで現状維持と判断した。ただ、自律的な回復の芽は広がりつつあり、景気回復と判断する素地は徐々に整いつつある」との言及がなされている。津村政務官は、景気回復の判断に際しては国内民需の自律的な回復が不可欠であり、中でも自律性を見極める重要なポイントとして設備投資を強調した上で、今後公表される詳細な投資動向などが反映される「国内総生産(GDP)2次速報を中心にもう少し数字を確認していきたい」としている。更に、ギリシャの財政危機の影響については、「ユーロ安・円高、ドイツをはじめとする欧州金融市場の制度変更や規制強化の動きをにらみながら、日本の株式・金融市場も若干の影響を受けており、少しマーケットを注意深くみていく必要がある」とのスタンスが示されている。
 同日、日本銀行より公表された2010年5月の金融経済月報によると、景気の現状判断については、前月の「持ち直しを続けている」から今月は「緩やかに回復しつつある」へと、2か月連続で上方修正された。金融経済月報における景気の現状判断で、「回復」の表現が示されたのは、2006年6月以来3年11か月ぶりのこととなる。個別項目を見ると、設備投資は前月の「下げ止まっている」から「持ち直しに転じつつある」に3か月連続で上方修正されるとともに、個人消費は、前月から「厳しい雇用・所得環境が続いているものの」の文言が削除されて単に「各種対策の効果もあって、耐久消費財を中心に持ち直している」とされ、住宅投資は前月の「下げ止まりつつある」から今月は「下げ止まっている」へと、いずれも上方修正がなされている。輸出と生産はともに前月同様、「増加を続けている」との判断が維持されている。
 2010年5月21日に開かれた金融政策決定会合後の記者会見の中で、白川方明日本銀行総裁は「(国内景気の)自律回復の方向に一歩進んできている」と述べ、今後も回復傾向をたどるとの見通しに自信を示した上で、欧州の信用不安については「現時点では世界経済が新興国、資源国にけん引される形で回復を続けていくという中心的な見通しを変える必要はなく、日本への影響は限定的」との見方を示している。
 景気判断をめぐって、日本銀行はやや楽観寄りにシフトしたのに対し、政府はやや慎重姿勢を見せているようだ。このスタンスの違いについて、菅経財相からは、「見方は、そう日銀と変わっているわけではない」との上で、「『よくなっているが、まだ十分でない』と言うか、『不十分さはあるが、よくなっている』と言うか、微妙な表現だが、私の立場は前者だ。やや慎重な姿勢で申し上げている」との見解が示されている。同様に津村政務官からも、政府と日銀の景気判断には若干の視点の違いはあるとしながらも、「大きなずれがあるとは思っていない」との言及がなされている。ヨーロッパ発の景気下ブレリスクの見極めと、設備投資を中心とした内需の自律回復への自信の度合いが、今後の景気判断の分かれ目となりそうである。

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