| 店頭マーケティングから買物満足のマーケティングへ 買物満足度を最大化するマーケティング |
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| 舩木龍三、大澤博一 | |
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構成 1.好調なローカルチェーンの成功のポイント 2.買物満足のマーケティングとは何か 3.買物満足度を高めるには-買物満足のマーケティングフレーム 4.買物満足のマーケティングの実践例―買物客の購買行動にあわせた売場展開 現在、イトーヨーカ堂やイオン、CVSの売上が低迷している。10年3月度のチェーンストアの売上は既存店で対前年93.4%、16ヶ月連続でマイナスとなっている。CVSも同様に対前年95.1%、10ヶ月連続でマイナスとなっている。PBを強化し、低価格化を進めても、客数が伸びず、客単価が落ち込み、売上減少となっている。メーカーも販促費を投入して、大量陳列を行っても、定番売場で優位を確保しても売上が伸びない状況が続いている。チェーンオペレーションを強化した企業ほど苦しんでいる。単品管理に基づく売れ筋中心の画一的な売場展開は、初めは売場生産性は良くなるものの、消費者にとって買いやすいが、面白味がなく、発見のない売場となり、売場の魅力度が低下し、消費者との不適合を起こし、結果的に売場生産性が悪くなるというジレンマに陥っている。
1.好調なローカルチェーンの成功のポイント好調なローカルチェーンの成功の主な要素は四つあげられる。ひとつは、地域特性をじっくりと読み込み、それに併せた業態を出店することである。ふたつは、売場の工夫、売場のアミューズメント化である。九州のローカルスーパーであるハローデイは、「顧客に楽しんでもらうためには、まず従業員が楽しい環境でなければならない」との考えのもと、店舗ごとにコンセプトを決め、趣向を凝らしたディスプレーで店内をアミューズメント化している。三つめは、個店の裁量により、自店の商圏固有のニーズに合わせた幅広い豊富な品揃えを行っていることである。小型ホームセンターで展開しているサンデーは、新規出店に際し社長自ら現地に足を運び、商品を調達している。その結果、既存の大型ホームセンターの品揃えを上回る8万アイテムの品揃えを行い、地域住民の生活に潜り込み、本当に必要な商品を品揃えしている。最後が、対面・カウンセリングによる「人」を介した売り方の工夫により、確実な購買につなげていることである。ダイユーエイトは、「専任アドバイザー」や「お客様親切係」を設け「心」を満たすサービスに力を入れている。顧客が求めているものを把握した上で、+αの提案や、より買いやすいレイアウトを提案している。東京の有力リージョナルチェーンのサミットも、魚売場など対面販売を強化している。人を介さないセルフ販売ではなく、人を介した対面販売を導入している企業が増えてきている。 これら130チェーンは本部主導による大量仕入れや売れ筋中心の品揃え、単品量販での低価格化など、量的な拡大を中心とするチェーンオペレーションを行っていない。地域需要に合わせた個店裁量による豊富な品揃えや売り方の工夫、地域密着・買物客への密着で持続的成長を実現している。 2.買物満足のマーケティングとは何かGMA(Grocery Marketing Association)定義によれば、ショッパーマーケティングとは、ショッパーの行動に関する深い理解に基づいて開発され、ブランドエクイティーを構築し、ショッパーをひきつけ、購買決定に導くために計画されたすべてのマーケティング刺激からなる活動であるとされている。着目できる点は、店頭に焦点を当てるのではなく、そこで買物をする人に焦点を当てていることである。ここから買物満足のマーケティングの狙いは買物客の買物満足度の最大化であると言うことができ、買物満足のマーケティングの主体は小売りとメーカーである。買物満足度はカテゴリーごとに小売とメーカーが連携して、品揃えや売り方、情報発信の仕方を変えていかなければ高めることができない。 これに対するものとして、店頭マーケティングがある。店頭マーケティングとは、メーカーが小売店頭で行うメーカーと消費者間の地域別コミュニケーション活動であり、自社製品の需要を店頭で喚起し、かつ消費者に買われやすくするための諸活動であると定義されている。活動主体がメーカーであり、メーカーの対市場活動のことであり、消費者と供給者の接点としての店頭レベルに問題の焦点を限定したものである。店頭マーケティングは基本的に小売店の活動であるインストア・マーチャンダイング活動をメーカーが補佐するものである。売場露出を基本としたものであり、マーケティングというよりもどう売るのかという販売を重視したものである。具体的には売れ筋中心の棚割りであり、大量陳列・特売型の売り方、レジ前やエンドサイドなどの空いている売場を活かすツール開発などである。店頭での物理的な側面を強化したものであると捉えることができ、その狙いはメーカーによる店頭における売場効率の最大化である。
3.買物満足度を高めるには-買物満足のマーケティングのフレーム
これを実現するためには、買物客をどのようにセグメントするかであり、買物満足のマーケティングの重要なポイントである。買物客は、ライフスタイルも違えば、時間に対する意識も異なる。それにともないセグメントごとに対応の仕方が異なる。コカ・コーラは、日本とドイツにおいてSBL(Shopper Behavior Landscape)と呼ばれる仕組みを07年に導入している。コカ・コーラのそれの特徴は、買物に対する志向で買物客をセグメントしていることである。全国4,400名を対象に、インターネット、買物日記、消費日記などの調査を実施し、五つのセグメントに分けている。「価格志向」「利便性重視(補充目的)」「賢い購買者」「利便性重視(食事の準備目的)」「買物に無関心」である。この五つのセグメントに向けて、「良いモノが売れるのではなく、買物したいモノが売れる」という考え方のもとで、各セグメントに対してどうアプローチをするのかを体系づけている。具体的には、「品揃え」「接触ポイント」「VMD」「店頭露出率」「クロスMD」「メッセージ」「入店直前の接触」の七つを組み合わせている。例えば、「利便性重視(食事の準備目的)層」には、惣菜売場でのクロスMDを提案している。「INSIDE THE MIND OF THE SHOPPER」のHERB SORENSENは三つに買物客を分類している。「短時間購入者」、「暇つぶし購入者」、「買いだめ購入者」である。この層の導線を調べて、最適な売場配置をSORENSENは提案している。 購買行動パターンや購買時の心理をもとに、買物客をセグメントしたうえで、価値を高めることとコストを下げることの両面でメーカーと小売業が協働で対応していく。 価値づくりでは、ふたつポイントをあげることできる。ひとつは生活の悩みを解決することである。ローカルチェーンの事例から、自分の生活の悩みを解決してくれるような商品を豊富に揃え、商品拡大へと転換させることである。全国の売れ筋商品だけでなく、その地域特有の商品やその顧客ならではの商品を品揃えすることである。メーカーは商品に関しては、パッケージなどの視認性を高める商品改良だけでなく、買物客の生活の悩みを解決するような商品の開発を行うことである。さらに生活の悩みを解決する商品と情報を組み合わせて店頭でセールスプロモーションを展開することなどがあげられる。 ふたつは、新しい生活の発見を促進することである。九州のハローデイのように買物客が買物していて楽しくなるような売場演出の工夫をし、生活の新しい発見を買物客に提供している。また、五感に訴える情報を発信することも売場での発見を促すひとつの方法である。実際、カルピスやハウス食品では香りによって嗅覚を刺激した展開を行い、実績をあげている。嗅覚以外にも、視覚、触角、味覚、聴覚などを組み合わせることで、五感を通じて買物の楽しさを喚起させていくことなどがあげられる。 コストを下げることでもふたつのポイントをあげることができる。ひとつは探索コストの削減であり、時間削減を促進するものである。買物の手間を省くために、買物客が必要な商品がまとめて購入できるように必要な商品を集積していくことである。ヤオコーが行っているライフスタイルアソートメントはひとつの例である。V字回復している東急ハンズは、消費者のなかで話題になっていることをテーマに設定して、それに関連した商品を集めて売場展開している。さらに、買物客ごとの導線をもとに、買物客が買いやすように必要な商品を臨機応変に売場展開していくことである。時間帯別売場展開や買物客それぞれの購入率が高いマグネット商品をうまく売場配置することなどがあげられる。 ふたつは、価格面でのコストをさげることであり、リーズナブルな価格設定を行うことである。価格を特売などに依存せず、買物客が納得して購入できる価格の設定やEDLP型の価格展開があげられる。タイムサービス的な特売対応ではなく、常に安いという状態を作りあげることである。
4.買物満足のマーケティングの実践例―買物客の購買行動にあわせた売場展開それを明らかにする一例として、時間帯別に店舗内導線を見ることがある。当社で郊外のSMで導線調査を実施し、買物客の導線を時間帯別にみると、いくつかの特徴を見ることができる。 午前~16時くらいまでの購買行動は、惣菜売場へ行く傾向が低く、生鮮食品を中心に回遊する傾向にある。時間に余裕のある専業主婦が中心であり、生鮮食品をベースにメニューを考えているためと考えられる。この時間の買物客に対しては、生鮮食品とその他の商品を組み合わせて、その日のメニューを生鮮食品売場周辺で展開していくことが必要である。メニューでの悩み解決を行う価値づくりと同時にメニュー選びを効率化し探索コストを下げる両面を実現することができる。 16時~18時までの購買行動は、中央の加工食品が展開されている中置きゴンドラ周辺を回遊傾向にある。前の時間帯が生鮮商品を中心に店全体を回遊し、導線が長くなる傾向にあるのに対して、この時間帯は店中央部分の回遊となり、導線が短くなる傾向にある。この時間は、おそらく有職主婦が中心になるため、時間加工食品を活用して、簡便に食事の用意をしている日常の調理実態を反映した購買行動になっていると考えられる。この場合、前の時間で提案した生鮮食品を使った本格的メニューを提案するよりも、加工食品を使った簡便なメニューを加工食品売場で提案した方が、この時間の買物客の生活の悩みを解決することができ、買物満足度を高めることができる。 18時~22時までの購買行動は、惣菜売場に行く傾向が極端に高くなることである(12~14時の惣菜売場の通過率は30%、16~18時は22%であるが、20~22時は80%と急激に通過率が高くなる)。店中央部分の回遊は低くなり、惣菜売場周辺を回遊する購買行動であり、飲料売場へ行く傾向も見られる。極端に導線が短く、コンビニエンスストアのような購買行動になっている。会社帰りの買物客がこの時間の中心買物客であるためだ。惣菜売場の充実や総菜売場周辺に飲料や菓子など同時に購入するような商品を集積し、CVSのような売場展開することで、探索コストを削減することができ、買物満足度を高めることができる。 ヤオコーでは、時間帯別の買物客の違いと購買行動の違いに着目して、時間帯別の対応を促進している。惣菜売場の立ち寄り時間が異なることに注目して、昼間は揚げ物の個数を4個にして、家族向けのセット商品を販売しているのに対して、夜は揚げ物を単品でパックして販売している。また、惣菜売場では通常のスーパーではパートのシフトの関係で、昼間作り置きしたものを夜で売り切る仕組みになっているため、夜はできたての惣菜がない。しかし、ヤオコーではシフトを組み換え、夜でもできたての惣菜を提供することで、夜遅い時間では品揃えが少ないために出来たての美味しい食事ができないという生活の悩みを解決し、夜に高まる惣菜需要に対応している。 買物満足のマーケティングを展開するうえで買物客の購買行動と意識を明らかにするのに必要な調査は、上記以外にも来店客出口調査や店内の購買行動を観察するVTR調査や行動観察調査などがある。出口調査では、買物時の意識を確認することと、店舗選択理由や事前の買物計画を確認することが大切である。VTR調査や行動観察調査からは買物客の商品を選ぶ時間の長さと選び方で買物客をタイプ分けすることでき、さらに購買決定までの時間(5~10秒)の間にどのような行動を行っているのかがわかる。出口調査や導線調査を組み合わせることで、行動と意識を繋げて見ることが可能である。 買物満足のマーケティングは買物客をセグメントして、その顧客の購買行動と意識を探ることで、セグメントごとにマーケティング展開を行い、価値づくりとコスト削減の両面から買物満足度を高め、納得して買物を行ってもらうことが重要である。キーワードは好調なローカルチェーンの展開から学べるように「地域密着」と「顧客密着」である。ある大手GMSの担当者は、「大手チェーンはNB中心の品揃えにならざるをえないし、それを中心に売り出している。ローカルチェーンはNBだけでなく、地元のメーカーの商品も数多く品揃えし、それを中心に販売している。お客様はローカルチェーンの方が親近感を覚えてしまっている。わが社でもこの部分を取り込んでいきたいが、本部で品揃えをする関係上、なかなかうまくできないところが問題である。」と語っていた。店頭マーケティングのような売場最大化の観点だけでは、お客様に対応できなくなってきている。大手チェーンストア、NBメーカーはこれまで行ってきたことと現実の間のギャップに悩んでいる。こうしたことを解決していくのが、メーカーと小売業が協働して展開する買物満足のマーケティングである。 (2010.06)
本稿は、当社代表・松田久一による助言・指導をもとに、舩木・大澤が代表執筆しております。本稿の内容は、松田からのアイデア・構想に大きく負っております。ここに謝意を表します。あり得べき誤りは筆者の責に帰します。 |
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