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渋り時代の景気回復のシナリオ
山本一作枝
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1.「渋り」時代の変換点
 貸し渋り、買い渋りの時代である。最新のマクロ統計をみると以下のとおりである(1998年7~9月期)。
・実質成長率 前期比 ▲0.7%(4四半期連続マイナス)
(実質GDP)
・民間最終消費支出 ▲0.3%(2四半期期連続マイナス)
・民間住宅 ▲6.2%
・民間設備投資 ▲4.6%(4期連続マイナス)
・公共投資 +3.6%(4四半期ぶりプラス)
4月の総合経済対策の効果が出始め公共投資がプラスに転じる一方で、GDPの約6割を占める個人消費は依然マイナス成長を続けている。銀行の貸し渋りによる設備投資の低下、家計の買い渋りと企業の業績悪化の悪循環が続いている。
 1997年までの消費不況の背景には、将来収入の減少、将来支出の増加、金融システムに対する不信感など「将来への不安」があった。可処分所得は増加しているにもかかわらず支出が押さえられた。現在は状況が少し違ってきている。1997年第4四半期以降、可処分所得が低下してきた。
可処分所得  
前年同期比  
消費支出  
前年同期比  
・97年7~9月+1.9%  +2.0%  
・97年10~12月▲1.9%  ▲2.5%  
・98年1~3月▲0.8%  ▲5.4%  
・98年4~6月▲1.8%  +0.3%  
季節調整前のサラリーマンの名目所得は1955年の統計開始以来初めて前年の水準を下回った。購買意欲の低下から購買力の低下へ、消費の環境は変化している。
  こうした状況下、景気の「底打ち感」が言われ始めた。高機能家電やWindows98、iMacなどに支えられた家電小売金額増(13.6%増)、新規格の軽自動車を中心とした新車登録台数の伸び(2.7%増)、住宅金融公庫貸し出し金利の引き下げによる持ち家建設の持ち直しなどがみられるためである。その他、様々な景気指標が、悪化と改善の両方の動きを示している。「変化の胎動」かどうかは別として、確かに、何かが変化しようとしている。

2.景気回復のきっかけ
  景気回復には購買力と購買意欲の変化が必要である。
 購買力に変化をもたらすのは総額9兆2千億円の減税策を盛り込んだ1999年税制改革である。個人消費に関わるものとして、4兆円の個人所得税減税、住宅減税、その他3,000億円の子育て・教育減税も検討されている。これらの減税が、購買力の低下を補い消費回復のきっかけになることが期待できる。
 購買意欲の変化についてはふたつの可能性が考えられる。
 ひとつは節約疲れである。不況が長引く中で、今、人々は節約に非常に熱心である。「普段から節約するようにしている」人は71%に及ぶ。特売チラシをチェックしてこまめに特売品を買いに行く、いくつかの店を見て回って安い店で買う、電気やガスをこまめに切る・弱くするなど手間暇をかけたり、会社の文房具など備品の拝借や経費でのタクシー利用もみられるなどその行動は様々である。書店では平積みになった家計簿の回りに主婦やOL達が集まり、「節約生活のススメ(飛鳥新社 山崎えり子著)」は25万部を売った。節約がトレンドになっている様子である。しかし、我々の調査結果からみると、実際に収入が減少したことにより節約をしているのは3割程度の人々である。残りの7割にはまだ購買力の余地は残されており、不安を背景に節約をしているに留まっていると考えられる。「とりあえず買いたい商品、利用したいサービスをがまんしている」(52%)と、節約に対するストレスがたまっている。長引く不況の中、節約疲れが生じる。「買い物のたびに節約について考えるのは疲れる」と思っている人は51%と過半数にのぼっている(図表1参照)。節約疲れの状況に減税がトリガーとなって消費に向かう可能性がある。  もうひとつは、「今が買い時」という不況下における合理的判断である。現在、不況だからこそ様々な商品が安い。そろそろ底値ではないか。金利も低く、預けるより買う方が得である。「様々な商品の価格が安くなり、今が買い時だ」(31%)という気持ちが生まれている。不況ならではの合理的判断によって消費が促進される。


本稿は、当社代表・松田久一による助言・指導をもとに、山本が代表執筆しております。本稿の内容は、松田からのアイデア・構想に大きく負っております。ここに謝意を表します。あり得べき誤りは筆者の責に帰します。


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【参考文献】
ダニエル・A・バトラー 『不沈-タイタニック』実業之日本社
山岸俊男 『信頼の構造 こころと社会の進化ゲーム』 東京大学出版会
松田久一『多様性優位のマーケティング革新』生活研究所報 第3巻第1号
Barber,B.1983 The logic and limit of trust. New Brunswick : Rutgers University.


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