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2010年のヒット商品
「理有(リアル)ライフ」に役に立つヒット商品
大場美子

 依然として消費低迷期は続いているものの、2010年後半から若干の消費回復の可能性がみえてきた。毎月の現金給与総額が、現時点で公表されている2010年10月までの8ヶ月間連続して前年同月比わずかながらプラスになっている(厚労省の毎月勤労統計調査、所定外給与、賞与含む)。節約態度は、弊社の消費調査データをみてもまだ過半の生活者が節約態度を保持したままという状況ではあるが、昨年同時期に比べれば10%程度縮小している(図表1)。

図表1.1年前と比べた節約姿勢の変化


 我々は「消費社会白書2011」(2010年12月発刊)において、今とこれからの消費について「21世紀の10年で日本の消費者は、バブル期の贅沢でもなく、不況期の節約でもない、新しい消費スタイルを創造しつつある。」(はじめにより)と解釈した。それがどのようなものなのか、2010年のヒット商品からヒントを探ってみよう。

 弊社モニター調査において自由記入形式により2010年のヒット商品として印象に残ったものをたずねた。圧倒的1位が「食べるラー油」であり45.5%、と半数近くの人にあげられた。以下iPad、iPhone4などのスマートフォンと続く。(図表2)

図表2.2010年のヒット商品として印象に残ったもの


 食に対する人々の関心は高く、最近は節約志向と相まって、内食頻度が増加している。「食べるラー油」は、TV番組や口コミなどで話題性が先行、桃屋などのNB商品は店頭で欠品が続くなど食べてみたいという欲望をかきたてた。ご飯や冷や奴にかけるなど超簡単な食べ方の他、例えばクックパッドではこれを使ったレシピが2,000件近くもアップされるなどコンテンツも充実し、手軽で楽しい内食の味付け役となった。内食関連では、電子レンジで魚が焼ける電子レンジ用の魚焼きパック、鮮度を訴求したパウチしょうゆ(2009年8月ヤマサから発売、2010年9月キッコーマンが発売)、「ホームベーカリーGOPAN」もヒット商品にあげられる。
 飲料では、ハイボール缶、アルコールフリーのビール風味飲料があげられる。前者は若者のビール離れといわれる中で、苦くなく、アルコール度数が低めの飲みやすさによって20代30代の若い層に受容された。後者は逆に、ビールが飲めない時に飲みたいというニッチなニーズに対して、これまでのノンアルコールビール風味飲料よりもおいしいという評価で受け入れられた。
 iPadは、タブレット型というサイズの端末普及の突破口を開く商品になった。iPhoneと同様の操作性でネットの閲覧、電子書籍端末として使い勝手がよい。秋以降にNTTドコモからサムスンのギャラクシータブ、シャープからGALAPAGOS(ガラパゴス)が発売され、端末競争が本格化する。PCよりも簡単で誰でも使えそうな身近なツールとして期待感は高い。
 3位、4位にあがったスマートフォンでは、iPhone4が普及拡大し独壇場だったが、2010年からやっとNTTドコモ、auから新製品が続々投入されている。iPhoneとアンドロイド端末とのプラットフォーム間競争、アンドロイドOS内での端末間競争が激化していく。ユーザーにとっては多様な端末の選択肢が拡大し、スマートフォン市場が急拡大していきそうだ。一部家電量販店では、既に携帯電話の販売台数を上回っているところもあるらしい。おサイフケータイなど高機能携帯の機能を搭載した新スマートフォンへの期待が高まっている。使う携帯から、「携帯なかったら死んじゃう」(20代後半女性の発言)とケータイ依存傾向が強まるなかで、スマートフォンと高機能携帯の境がなくなっていく。
 その他、話題になった家電のヒット商品としてあげられるのが、電動歯ブラシのポケットドルツ、美容家電のイオンスチーマーナノケア(両者ともパナソニック)がある。ポケットドルツは、マスカラをモデルにしたデザインで化粧ポーチに入るサイズで、オフィスなど家の外での歯磨き行動に対応したものだ。
 趣味系では、コンパクトデジカメの伸びが頭打ちになったところで、ミラーレスの一眼デジカメがソニーのNEXシリーズに牽引され活気づいている。コンパクトデジカメよりも高画質の写真を撮りたい、マニアではないが写真好きな一般層のニーズを、独特のデザインや機能をうまく訴求して捉えた。
 2、3年前からアウトドアスポーツのウェアやグッズが伸びているが、特に女性向けのファッションでランスカ(ランニング時のスカート)、山スカと呼ばれる巻きスカートがヒットしている。最近の登山ブームは中高年が主役だったが、若い女性にも拡大している。

 この他、エコカー補助金・減税効果を受けたハイブリッドカー、エコポイントで駆け込み需要が大きかった大型薄型TVなどが販売数量を大きく伸ばした。主たる受容層は50代以上の世帯である。クルマの需要は、補助金がなくなった9月以降、3割以上の減少が続いており、2011年も国内需要は厳しい見通しである。
 クルマや大型TVなどの大型の選択的耐久財、高額な海外プレステージブランドや海外旅行は、20代30代の若い世代にとって、欲しいものリストには上がってこない。対照的に、先にあげた2010年のヒット商品は、「内食」「情報端末」「趣味」の領域の、コンパクトなものだ。内食もどりで調理を楽しむ人が男女を問わず増えている。節約をかねて会社に弁当を持参したり、家飲みをしたりすることが若い世代で増えている。掃除や洗濯などの家事も、道具や用途別の洗剤や商品を使って楽しむ。友達を家に招くことを念頭において、賃貸選びでは内装や設備を重視しインテリアに関心が高い。
 求めているのは、大きくて特別な贅沢よりも、ふだんのリアルな日常生活を工夫し、楽しむためにお金を使う、内向きの消費スタイルであり、自分の趣味に合った生活スタイルを実現することである。

(2010.12)




 

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