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HOME > JMRからの提言 > 提言論文 > 消費 > 提言論文 「消費社会白書2007」に寄せて(2006年)

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消費社会白書2007より
「消費社会白書2007」に寄せて
JMR生活総合研究所 客員研究員 吉野 太喜

 『消費社会白書2007』を読んで、印象に残ったことが三つある。
 ひとつめは、オタク的消費から趣味的消費、そして階層的消費へという流れである。
 前年の白書において筆者は、オタク的消費と、趣味的消費と、階層的消費とを区別し、他のことを放り出してひとつのモノ・コトにこだわるのはオタク的、複数のモノ・コトに一貫したスタイルを持つのは趣味的、その趣味が所得に支配された画一的なものであるなら階層的である、と述べた。今年のデータでは、オタクと趣味人との差異がより鮮明に現れている。オタクと趣味人は、自分の趣味に合うものを身辺に集める点で共通するが、趣味人が自分の趣味に合わないものを身辺から遠ざけるのに対し、オタクはそれに頓着しない(第5章【4】「広がる平成趣味ライフ」参照)。現在の消費をリードしているのは、ライフスタイルを持った趣味人であるという。
 しかしその一方で、階層的消費の影も忍び寄る。モノによって自分の趣味を満たすのではなく、他人との比較で満足を得ようとする人の数は着実に増えている。「他人にうらやましがられるのは気分がよい」「他人よりも良い物を買ったり身につけたりしたい」と答えた人は、数ではまだ全体の3割程度だが以前と比べて大幅に増えている。一方、自分の所属する階層に対する意識は、より正確に、より鮮明になっている(第2章【2】「広まる階層意識」参照)。これは格差を声高に論じるようになったメディアの影響も大きいだろう。今後、経済的格差の拡大とともに階層の固定化がすすめば、自分の所属する階層を他人に示すための記号としてモノを用いる傾向がさらに強まる一方で、趣味的消費はやせ細る可能性がある。趣味的消費の時代がどれだけ続くかは予断を許さぬ情勢である。
 ふたつめは、ステレオタイプな日本人像はもはや適切でない、ということである。価値観についての調査を見ると、「手先の器用さは自慢できることだ」「もったいないの精神を大事にすべき」と答えた人の割合が最も少ないのは日本人であり、「投資や資産運用でお金をいうのである。さらに、ソーシャル・ネットワーク儲けるよりも、モノを作ることを仕事にしたい」という回答は(単純な数でみると)むしろ中国人のほうが多い。「義理や人情を大事にしたい」「親類や友人がお金に困っていれば、自分のできる範囲で手助けする」人は米国・中国の半分にも満たない。器用で勤勉で義理に厚くモノを大事にするといった陳腐なイメージは、必ずしも当てはまらない。
 デジタル機器の選択意識でも意外な結果が見られる。昔から幕の内弁当のような軽量・小型・多機能を好むといわれた日本人だが、「同じ機能であれば、小さくて軽い製品のほうがよい」「単機能よりも、いろいろな機能が付いている製品に魅力を感じる」と答えた人は米国・中国と比べてむしろ少ない。量販店には最新のデジタル機器があふれているのに、「デジタル機器を買うときは、常にそのとき最新の最高級機種を選ぶ」「商品開発者のこだわりが感じられる製品を買いたい」という人も少ない。

 三つめは、調査の所々から垣間見える、趣味化とは無縁な集団の存在である。
 たとえば携帯端末に関する調査では、対象者の7割が先端的機能には関心がないという。モノへの関心が強い層は、都市やネットの中心部に棲んでいる情報リテラシーの高い一部の人に限られており、周縁部に棲んでいる大半の人は特にスタイルを持つことなくただ目に付いたモノを買っているのかもしれない。また、かつては商品分野ごとにオタクと一般人とが存在していたのに対し、いまは複数分野にまたがるスタイルを持つ趣味人と、どの分野にもスタイルを持とうとしない無趣味人とに分かれつつあるのかもしれない。趣味人と無趣味人の割合はどの程度か、どちらにターゲットを絞るのが有効なのか、今後そういった分析が行われることを期待したい。

(2006.12)
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