| 沈む消費、浮上する商品サービス |
| 本稿は、「週刊エコノミスト2008年10月28日号」掲載記事のオリジナル原稿です。 |
| 消費研究チーム |
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1.急速に悪化した消費マインド物価は、2007年10月から全国消費者物価指数が上昇に転じ、2008年に入ってさらに上昇率が高まっている。弊社が7月に行った消費者調査では「昨年と比べて物価があがった」と実感している人は15才から69才の対象者の93%にのぼり、消費者全体の共通の実感となっている。収入面では勤労者の所定外労働時間(残業)が2008年4月以降前年を割り、現金給与総額が減少傾向をみせはじめている。さらに、株価の低迷により家計が保有する金融資産残高も減少しているという認識が広がっている。 実際の家計支出の動きは、値上げが食品や日用品を中心に相次いだ結果、日常的支出が増加している世帯が多い。反動として、今後の支出は抑えようとしていることがうかがえる。
2.節約トレンド下のヒット商品
ファッション関連衣料品販売業界が総じて減収だが、ユニクロが「独り勝ち」状態である。08年8月期決算で売上2ケタ増、営業益3割増と他を圧倒している。9月13日にスウェーデンのアパレルブランド「H&M」が初上陸、銀座店がオープンし1ヶ月が経過した現在でも行列が続く人気だ。11月に原宿店、来年には渋谷出店と、今後全国展開する計画である。両者ともカジュアルで品揃えが広くリーズナブルな価格設定でありながら、デザインや素材へのこだわりと機能性の高さで差別的なブランドイメージを持たれている。 化粧品業界では、意外にも超高級化粧品が伸びている。一例として資生堂から登場した「クレド・ポー・ボーテ シネルジック」という洗顔石けんが1万円という高価格帯のスキンケアブランドが計画を大幅に上回る好調ぶりである。 「食」関連値上げの直接の影響として、値上げ幅の大きかったナショナルブランドのカップ麺は沈み、かわってプライベートブランドが浮上した。ビール類は、数年前から発砲酒、第3のビールが拡大してビールが縮小傾向にあったが、値上げ後に、ビールから第3のビールへのスイッチがすすむと同時に値上げしなかったプレミアムビールブランドは好調を保っている。消費者の外食離れ、内食もどりが鮮明だ。米が伸びている。総菜などの中食、パスタソースなど一から手作りではない内食お助け商品や、割高でも小容量容器の調味料などは、外食していた独身層の内食需要によるところも大きい。長期トレンドとして美容やメタボ対策の特保(特定保健用食品)商品が伸びている。ハウス食品の「プライムジャワカレー」は標準品より高価格だが低カロリーでおいしいと好調である。 不振の外食の中でもファミリーレストランは深刻であるがショッピングモールのフードコートは堅調である。ワンストップで買い物から食事、エンターテインメントまでカバーする巨大モールと、特徴のある店舗の集合が魅力になっている。 「住」と余暇レジャー昨年の法改正までは堅調だった首都圏のマンション市場は新築マンションの販売低迷が深刻さを増す一方で、割安感の出てきた中古マンションは好調である。自動車は、国産車、輸入車ともに全体は低迷しているが、ホンダの「フィット」が2008年度上半期で対前年86%増と昨年のフルモデルチェンジから好調を持続している。ダイハツ「タント」、ハイブリッド車の代表格としてのトヨタ「プリウス」も対前年33%増と低燃費車人気で販売を伸ばしている。新型「クラウン」もフルモデルチェンジが寄与し70%増である。 自転車が伸びて今年上期では台数ベースで11%増、金額ベースでは20%増加している。特に電動アシスト車と、ロードレーサーやクロスバイクなどスポーツ車は高級品ほど売れている。健康志向でエコ、かつガソリン代の節約というだけでなく趣味性の高さがもうひとつの成長要因だ。 情報通信機器では、圧倒的なパフォーマンスを誇るネットブック、ウルトラモバイルパソコンと呼ばれる5万円を中心として、10万円以下の小型PCが売れている。携帯電話はこの春の価格体系の変更以降沈んだまま、「iPhone」も話題性だけで販売は伸びていない。 旅行代金に上乗せされる燃油サーチャージ料の高騰で海外旅行は割高感拡大で沈み、安・近・短の国内旅行が伸びている。 流通・小売百貨店はファッションの不振が響き既存店売上高が5ヶ月連続で対前年割れ、不採算店の閉鎖が相次いで発表されている。浮上しているのは、コンビニエンスストア、100円ショップ、ネットスーパーである。コンビニエンスストアは総菜などの中食を中心とする最大の食品流通業であると同時にATMや宅配便、各種料金の支払いなど生活インフラ機能を拡大して利便性を増している。韓国などからの輸入品で品揃えが多い100円ショップは円高効果によって価格競争力が高くなり商品のパフォーマンスがますます良くなってくる可能性がある。 3.進む商品の再選択同時にムダと感じられるものの支出が見直されている。インポートブランドや海外旅行、外食への支出が抑制され、浮上したのは、パフォーマンスのよい商品と付加価値の高い商品サービスである。ユニクロやH&M、値上げしなかったプレミアムビールや、ネットパソコンなどが典型である。 長期トレンドとしてのエコに加えてランニングコストが削減できるハイブリッド車や、自転車が伸び、健康志向から特保食品・飲料など高額でも受容拡大しているものもある。内食化も長期トレンドである。 消費者は、値上げへの対応として短期的に節約トレンドを強めているが、単に価格志向を強めたり購入数量を減らして支出を抑えるわけではない。健康や趣味など関与度の高いものについてはむしろ付加価値の高いものが伸びている。ムダを見直して生活のパフォーマンスを高めようとしていると考えられる。言い換えると購入商品のバスケットの中身を変えようとして、商品サービスの選び直しが行われている段階なのである。 消費は、長期的には雇用と景気などの環境認識によって動いている。消費マインド悪化の主因だった物価上昇は、原油の値下がりや、食品の値上げ見送りの動きが出てきておりいずれ頭打ちとなるだろうが、今後景気後退により企業業績が悪化し収入の減少が目に見えてくると、もう一段の商品サービスの選別が進むことになるだろう。消費低迷下に消費者の選別に生き残る鍵は、ブランドと品質への信頼である。 (2008.10)
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